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ウインブルドンを騒がす様々な問題 握手拒否でブーイング、ラケット落として罰金、トップ選手との格差拡大... (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【優れた審判員が減っていく...】

 加えるならウインブルドンは、全豪および全米オープンで使われている『電子ライン判定技術』も用いていない。この件について大会ディレクターは、「現時点では、まだ導入するかどうかは決めてない」とし、「あらゆる可能性に門戸は開いている」と言うにとどまった。

 線審を排する趨勢に関しては、テニス界でも意見が分かれている。選手間では、電子判定技術肯定派が多数。

 一方で、線審は主審やレフェリー予備軍であり、線審を排することは人材育成の場を奪うことになるとの懸念があるのも確かだ。

「ウインブルドン史上最高の決勝戦」と名高い2008年ロジャー・フェデラー対ラファエル・ナダルの主審を務めたパスカル・マリア氏は、次のように語ったことがある。

「私自身、線審としてキャリアをスタートしました。小さなテニスクラブで線審をやっていた時の夢は、グランドスラムのチェアに座ること。その夢が失われたら、線審の成り手もいなくなります。

 それにすべてが電子化されると、選手たちはフラストレーションの捌け口を失う。近年、選手と観客間のトラブルが増えているのは、それも一因だと思います」

 なお、マリア氏は2017年に審判員を引退したあと、レフェリーとなった。レフェリーは大会全体の進行を統括する役職。優秀な審判員が育たなければ、優れたレフェリーも生まれない。

 レフェリーの重要な仕事のひとつが、毎日の試合スケジュールを決めること。今大会のレフェリーは、その点では大いに頭を悩ませただろう。大会序盤は雨続きで、試合順延やコートチェンジ等の判断を、分単位で迫られたからだ。

 しかも、センターコート及びナンバー1コートには開閉式屋根があるため進行が早く、ほかのコートと足並みが揃わない。そのため、トップ選手たちが早々に3回戦進出を決めるなか、一部の選手は初戦すら始まらぬ「格差問題」も勃発した。

 屋根の恩恵を受けたノバク・ジョコビッチにしても、4回戦が2日間に分かれたため、「試合開始時間を早めるべきだ」と苦言を呈す。

 他方、大会側は「変える予定は現時点ではない」と明言した。センターコートには基本3試合が組まれ、1試合目が始まるのは午後1時半。このオーダーの勘所は、最も視聴率が期待できるゴールデンタイムに、3試合目が行なわれることだ。その実利の前では「芝を守るため」という大義名分も、いささか弁解じみて響く。

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