大坂なおみ、出産→現役復帰後の道のりは...。女性スポーツの先端をいくテニス界の現状 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【セリーナが残した偉大な功績】

 さらに大きいのは、「出産や病欠によるスペシャルランキングには、シードがつく」ことである。

 従来のルールでは、スペシャルランキングは大会出場のみに用いられた。その点が改善され、スペシャルランキングもシード適応の対象になったのだ。これにより、上位選手の復帰ロードはより短縮されたと言えるだろう。

 巷間で「セリーナ・ルール」と呼ばれたこの新制度の助けもあり、セリーナは復帰後も3度のグランドスラム決勝に進出。優勝とはならないまま昨年9月にコートを去ったが、テニス界に残した功績は計り知れない。

 そして、その恩恵に大きく預かりそうなのが、セリーナに憧れ抜いた大坂だ。

 スペシャルランキングは"妊娠の始まり時期"で決まるため、大坂の正確な数字は不明だが、50位以内なのは確実。グランドスラムでのシードはつかないが、ツアー大会ならシード対象の可能性がある。

「産後3年」のスペシャルランキング適応期間も、もとより出場大会を絞る大坂にとって、大きな助けになるだろう。クライシュテルスやセリーナが証明してきたように、再びグランドスラム決勝の舞台に立つのも、決して不可能ではない。

 2021年に精神面の不調を明かし、ツアーも離脱しがちだった大坂にとって、新たな家庭を築くことは、心身の大きな転換期になるのは間違いない。

 かつて「いい人すぎて勝てない」と言われたクライシュテルスは、復帰後、ファーストキャリアを上回る活躍を見せた。

「子どもがいることで、オンコートとオフコートの切り替えができるようになった。テニスは人生の一部にすぎないと感じられた」

 そう語り、次々にタイトルを掴むクライシュテルスに、精神面の強化を見た人は多い。

 果たして大坂は、クライシュテルスやセリーナが切り開いてくれた道をたどるのか? あるいは......?

 その答えを知るには、少なくとも1年は待たなくてはならない。

【筆者プロフィール】内田暁(うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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