大坂なおみ、苦手なクレーコートで新技に挑戦。ナダルを見て学び、動きも少々ぎこちないが「楽しんでいる」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

「今季はクレーコートシーズンでいい結果を残したい」

 彼女がそう言ったのは、今から1カ月以上前の3月上旬。ハードコートシリーズ最中の、BNPパリバ・オープン開幕前のことだった。

 視線は目前の大会に向けられながらも、視界の端にはクレーコートの赤がにじむ。まるで、来たる赤土の季節に心が逸るかのような、大坂なおみの佇まいだった。

久しぶりにクレーコートにやってきた大坂なおみ久しぶりにクレーコートにやってきた大坂なおみこの記事に関連する写真を見る 天候等によって特性が変わる赤土のクレーコートは、大坂にとっても、その時々で意識や関係性が移ろう気難しい存在だ。

 大坂が初めてヨーロッパのレッドクレーに立ったのは、プロとして3年以上の年月を経た18歳の時。もっとも大坂はそれまでにも、米国フロリダ州に多い"グリーンクレー"で試合経験を積んできた。それだけに、初遠征前には「クレーも得意よ」と笑っていた。

 だが、実際に欧州の赤土を踏んだ時に、自分の見込みの甘さを痛感したという。ボールの跳ね具合から足もとの滑る感覚まで、レッドクレーはグリーンクレーとは大きく異なっていたからだ。

 赤土の最大の特性は、バウンド時に球威は土に削り取られるように落ち、代わりに上方へと跳ねあがること。ゆえにラリーが続きやすく、ハードコートとは異なる戦略性や忍耐力が求められる。大坂をもっとも苦しめたのは、この点だ。

 かくして戸惑いから始まった赤土との関係は、2019年にマドリード大会とローマ大会でベスト8入りしたことで、大きな歩み寄りを見せる。

「赤土でのフットワークや、スライディングの仕方がわかってきた」

 大坂も自身の成長を感じた2019年。ただし、翌2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、クレーコートの出場はなし。

 そして、2021年----。気持ちも新たに挑んだヨーロッパのクレーコートシーズン。だが、マドリード大会で2回戦、続くローマ大会でも初戦敗戦を喫している。

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