大坂なおみ、数字に現れなかったすごさ。
「冗談みたいなレベル」の試合を制す (2ページ目)
最終セットを迎えた時点で、大坂にはブレークどころか、ブレークポイントすらない。総獲得ポイントは大坂がわずかに上回るが、ウイナーの数ではブレイディが上回っている。周囲の目には、試合展開は互角か、ブレイディのやや優勢と映ったかもしれない。
だが、外部から見る者が抱く印象と、コートに立つ当事者の胸中や試合の本質には、時に乖離が生じることがある。
大坂ですら「崩せない」と感じていたブレイディの強固なストロークは、本人にしてみれば、実は決して望んだプレーではなかったという。
「本当は、もっといろんなショットを織り交ぜていきたかった。でも、彼女のショットはあまりに強烈で、速かった。もっとフォアハンドで打ちたかったが、それもできていなかった」
試合後にブレイディは、少しばかりの悔いをにじませ述懐する。
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たしかに準決勝までのブレイディは、ドロップショットやスライスも用いたショットバリエーションを披露し、危なげなく勝利を手にしてきた。それら多彩なショットで相手を崩し、得意の回り込みフォアでとどめを差すのが、ブレイディが最も得意とするパターンだ。
準決勝でもそのスタイルを変えるつもりは、彼女になかったという。だが、大坂のショットスピードと精度が、ブレイディにそれを許さなかった。一見、バックのクロスの打ち合いは互角に見えるが、そこからストレートに打ち分ける展開力では、大坂が勝っていたのも事実である。
スタッツの上ではわずかに上回るも、プレーに窮屈さを覚えていたのは、ブレイディのほうだったかもしれない。その圧迫感が、1本のやや意志を欠いたミスショットを生み、そのミスが試合の流れを決定づけた。
第3セットの第4ゲーム。15−15の場面でブレイディが放ったバックはネットを叩き、続くバックの打ち合いでは大坂のショットがネットをかすめて、ブレイディのコートにポトリと落ちた。最後はブレイディのバックがラインを割り、大坂がこの試合初めてブレークを奪う。
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