2020.06.01

錦織圭、涙の棄権。「マイアミの誓い」は
6カ月後、ニューヨークで叶った

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第15回 テニス・錦織圭
ジョコビッチ戦を棄権したマイアミ・オープン準決勝(2014年)

 アスリートの「覚醒の時」----。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか......。筆者が思う「その時」を紹介していく----。

マイアミ・オープンを棄権した当時24歳の錦織圭 少しばかりスイートスポットを外した相手のショットが、ベースラインを超える一瞬を見届けると、彼は両手を紺碧の空へと突き上げ、そのまま何度も拳を手元に引き寄せた。

 右手からこぼれ落ちたラケットは、スタジアムを揺るがす大歓声のリズムに合わせて、コートを二度三度と小さく跳ねる。

 世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が、ベンチのタオルやラケットを手早くバッグに詰め込むその横で、勝者は降り注ぐ暖かな祝福の拍手と陽光を浴びながら、弾むようにコート中央へと踊り出て再び両手を天にかざした。