コロナの猛威はウインブルドンにも。中止を決断させた「繊細な」芝問題 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


 そしてもうひとつ、ウインブルドンが従来の時期以外では開催が難しい理由に、日照時間がある。

 現在ではセンターコートなどに照明が設置されているが、それでもウインブルドンでは、自然光しか用いないのが原則。夏至から日の浅い6月下旬は日が長く、遅ければ21時半頃まで試合が可能だ。

 だが、緯度の高いロンドンでは、夏の日差しは瞬く間に去り、つるべ落としの秋の日暮れが訪れる。夏至から遠ざかれば遠ざかるほど、開催の難度が増すのは間違いない。

 さらには、ウインブルドンの開幕そのものは6月だが、すでに準備を進めなくてはいけない時期に差しかかっている。それら準備にあたるスタッフの数は、ボールパーソンや審判員、グラウンドキーパーなども含むと、数千人に及ぶという。

 とくに、一糸乱れぬ動きを見せるボールパーソンはウインブルドン名物でもあるが、その背景には厳しい選考プロセスと、幾度にも及ぶ合宿と訓練がある。現状ではそれらを行なうことも困難であり、それら種々の要因を考慮すると、今が最終判断を下すギリギリのタイミングだった。

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