2019.05.09

半べそをかいてから3年。
大坂なおみは赤土での戦い方を学んでいた

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 3年前の18歳の日……彼女は、まだ何も知らなかった。

 当時すでにトップ100ランカーであり、ツアーで最も期待される若手のひとりに数えられながらも、欧州のレッドクレーでのプレー経験はなし。それでも、彼女は欧州遠征に赴く直前まで、「私はフロリダのグリーンクレー(砕いた変成岩を使用した、アメリカで主流のクレーコート)でよく練習していた。ハードコートでも私はスライディングが得意だし、レッドクレーはきっと好きだと思う」と、自信を口にしていたのだ。

マドリード・オープン3回戦を難なく突破した大坂なおみ だが、実際に初めて赤土に足を踏み入れた時、彼女は「ちょっとなにこれ!」と、半べそをかきそうになったという。

 グリーンクレーと赤土では、ボールの跳ね方が大きく異なる。どんなにハードヒットしても、粗い砂粒に威力を削がれた黄色いボールは、バウンド後に急激に速度を落とした。また、ズルズルと滑る足もとはまるで氷の上を走るようで、ハードコートで得意としたスライディングはまったくと言ってよいほど応用が効かない。

 この”赤土デビュー戦”となった2016年以降、今季を迎えるまでの3シーズンで、大坂なおみのレッドクレー戦績は9勝10敗。いつしか苦手意識が積もったのも、当然と言えば当然だった。

 その彼女が今シーズンは、早くもレッドクレーで5勝を手にしている。唯一の敗戦も腹筋の痛みによる棄権なので、コート上ではまだ負けてはいない。マドリード・オープン3回戦でアリアクサンドラ・サスノビッチ(ベラルーシ)を6−2、6−3で破り手にした白星も、彼女が深めつつある自信と手応えを裏打ちするに十分な快勝だった。

 とはいえ、第1セットの内容は、スコアほどに簡単なものではない。ブレークこそ許さなかったが、自身のサービスゲームはすべてデュースまでもつれている。

 ただ、それらいずれのゲームでも、彼女はサービスで危機を切り抜けた。この日、大坂が決めたエースは9本。ファーストサービスの確率も、69%の高確率を記録した。