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大坂なおみに「ありがとう」。
日比野菜緒がフェドカップで吹っ切れた日 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「初めて選ばれた時は、緊張感から、試合の前も後も泣いていて......」と、日比野は当時を回想する。

 2度目の選出は、昨年2月にインドで行なわれたアジア/オセアニアゾーン予選。その時は「いろんなことにイライラして、わけもなく周囲に当たり散らした」。それでも、通算3勝1敗の戦果をあげてチームの勝利に貢献するが、そのわずか3~4週間後には、ワールドグループ復帰をかけた4月の対イギリス戦から外れる旨(むね)が告げられる。

「あれは、落ち込んだな......。わかってはいたけれど、悔しかったですね」

 インドでの1週間に及ぶアジア/オセアニアゾーン予選を戦い抜いたメンバーから、外れたのは自分だけだった。代わりに選出されたのは、BNPパリバ・オープンで優勝し、大躍進を果たしたばかりの大坂なおみである。

 その戦績だけを見れば、この結果はある程度は予見できていた。それでも、胸をふさぐネガティブな感情は、打ち消しようがない。練習コートに行きたくない、テニスもしたくない、やめてしまいたい......。そんな捨て鉢(ばち)な衝動にも襲われたという。

 それらフェドカップに端を発する煩悶(はんもん)を、洗い流してくれたのもまた、フェドカップだった。

 日本対イギリス戦が行なわれたのは、日比野が日頃から練習拠点とする兵庫県三木市のブルボンビーンズドーム。見に行くつもりはなかったものの、コーチに説得されて渋々会場に足を運んだ日比野の目に映ったのは、チームの勝利のために必死に戦う盟友たちの姿だった。

「あれだけがんばっているみんなの姿を見たら、私が外されたことなんて、どうでもいいかって。日本も勝ったし、また選ばれるようにがんばろうって思えて」

 日本が勝利を決めた時は、選手やスタッフたちに手招きされ、歓喜に沸くチームの輪に加わる。大坂に「出てくれてありがとう」と言った時、わだかまりはスッと消えた。

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