2019.02.26

大坂なおみに「ありがとう」。
日比野菜緒がフェドカップで吹っ切れた日

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「やっぱり、国旗のついたユニフォームを着るとテンション上がりますよ!」と、日比野菜緒は笑顔で言う。

 今年2月に行なわれたフェドカップ(女子国別対抗戦)は、彼女にとって、通算3度目の代表選出だった。

「フェドカップ優勝」を目標のひとつに掲げる日比野菜緒 シングルスの2番手として日の丸を背負い、戦績は1勝1敗。価値ある白星をひとつもたらしたことと、自分のテニスの方向性が見えた充実感。同時に、チームを勝利に導く2勝目を、接戦の末に掴みそこねたことへの悔い……。それら複数の情動が、代表ジャージに編み込まれた。

 日比野が抱く代表への想いの原点には、同期選手たちへのコンプレックスに似たライバル心と、オーストラリア留学がある。

 今でこそ同期のなかでも出世頭の日比野だが、小・中学生時代はけっしてエリート街道を歩んできたわけではない。

 ジュニアの強化選手に選ばれるのは、国内タイトルを総ナメにしていた尾崎里紗や、全豪オープンJr.ダブルスで準優勝した穂積絵莉と加藤未唯――それら同期の強化選手とは、同じ遠征先に出かけても、「ナショナル選手とそれ以外は、間にきっちり線を引かれている」と感じていた。

 ならば、自分は独自の道を進むとばかりに、高校時代はオーストラリアへ留学する。そのホームステイ先の家族が、いかなる競技でも国際試合となればテレビの前に集い、オーストラリア代表を応援する姿に新鮮な感動を覚えた。

「こんなふうに誰かに応援してもらえる、勝てばみんなに喜んでもらえるのが、国際試合なんだ」

 スポーツを愛するホストファミリーの情熱は、日本を離れたからこそ感じていた郷愁とも重なり、彼女のなかで代表への憧憬としてかたどられた。

 日比野が念願のフェドカップ日本代表に選出されたのは、前年末にツアー初優勝し、ランキングトップ100入りした2016年のこと。ただし、代表への強い思い入れは、歓喜と失意が表裏となり、不安定に回転するコインのようなものでもある。