強さが隠していた疲労のピーク。
次の頂点へ大坂なおみには休息が必要 (2ページ目)
まだグランドスラムのタイトルこそないものの、決勝の舞台や世界1位をかけた試合の場数も踏んできた彼女には、大坂の心境を察するに十分な経験があった。また、半年前の大坂との対戦で、ミスを重ねて敗れた悔いも当然あっただろう。
「彼女をパワーで打ち負かそうとは考えないようにした。相手は、私よりもパワーがある。だから、私は我慢強く戦い、チャンスをじっくりと作り、攻めるべき場面を待つよう心がけた」
186cmのアタッカーは、年少の全米女王に最大の敬意を払ったうえで、勝負に徹した策を思い描いていた。
そのようなプリスコバの戦い方に、大坂は「とくに驚きはなかった」という。だが、はやる気持ちのためか、あるいは未体験ゾーンを駆け抜けたこの1ヵ月の疲労の蓄積のせいか、これまでは決まっていたフォアの強打が、あるいは安定のバックが、この日はことごとくラインを割り、ネットを叩いた。
自分のミスに声を上げ、天井を見上げラケットを取り落とす姿が、過去の試合にはない苛立ちや落胆の感情を浮き彫りにする。第1セットは第5ゲームで、第2セットでは第9ゲームでダブルフォルトした大坂は、これらのサービスゲームをいずれも落とした。
一方のプリスコバは、スピードはいくぶん抑えながらも、コーナーを丁寧につくサーブでゲームキープし、崩れる気配がまるでない。サーブを武器とする両選手の対決では、このわずかなミスによるふたつのブレークが、最終的に試合の命運を決した。ちなみに、大坂が今大会の4試合を通じてダブルフォルトを犯したのは、この試合のわずか2本のみである。
会見室で、多くの記者の視線やテレビカメラが向けられるなか、敗戦を振り返る彼女は「まだ、何がおきたのか考えられていない」と、ポツリポツリと想いをこぼした。
「まだこのような状況には慣れていないし、今日も多くの方がいるなと感じる。この1ヵ月間、あまりにすべてが速く過ぎて、何が起きているかを落ち着いて見つめる時間がなかった」
2 / 3