2018.09.24

強さが隠していた疲労のピーク。
次の頂点へ大坂なおみには休息が必要

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「今日の私は、いっぱいいっぱいになってしまって……」

 いくぶん潤んだ瞳を伏せ、疲労と困惑の色を浮かべた表情で絞り出したこの言葉が、この日の彼女の状況を何より端的に物語っていた。

ミスが重なり落胆した表情を浮かべる大坂なおみ 全米オープン優勝の直後から、アメリカでテレビ出演などをこなし、来日してからは連日カメラに追われ、かつてない喧騒と注視にさらされたまま、東レパンパシフィックオープン(PPO)の戦いに身を投じた。

 過度なプレッシャーや調整不足が危惧され、「コンディションがよくないらしい」という情報も流れるなかで迎えた初戦(1回戦はシード免除の2回戦)。ところが、いざフタを開けてみると、大坂なおみはサーブもストロークも盤石で、実力者のドミニカ・チブルコワ(スロバキア)を6−2、6−1のスコアで圧倒する。

 後に本人も「こんなに冷静に大会に入ってこられたことに、自分でも驚いている」と打ち明けたが、グランドスラム直後、しかも母国での試合という状況を考えたとき、確かに彼女の落ち着きは驚嘆に値するものだといえた。事実、今季の大坂以外の四大大会優勝者は、その直後の大会でいずれも3回戦以上に勝ち進めていないのだから……。

 ただ、このあまりの強さが、そして決勝までひとつのセットも落とさぬ圧巻の勝ち上がりが、まだ面差しに少女のあどけなさを残す20歳が背負う重みを見えにくくしただろう。とくに、完璧主義者の彼女が「悪いところが見当たらなかった」と振り返る準決勝後の記者会見では、もはや彼女の優勝が規制路線であるかのような、やや勇み足の祝福ムードすら漂っていた。

 対して、全試合フルセットの苦しい勝ち上がりのカロリナ・プリスコバ(チェコ)は、周囲が自分の勝機は薄いと見ていること、そしてその状況が大坂には重圧になることも考慮し、決勝のコートに向かったはずだ。