錦織圭、集中力のネジを巻きまくり。「芝史上最高の出来」で快勝 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 コートに入る前から「9時15分ごろまで試合はできる」と頭にあった錦織は、このとき、「もう9時ごろかな」と時計に視線を向け、まだ"想定タイムリミット"まで30分以上あることに驚きを覚えたという。同時に、日没前に試合を終えられる可能性を知った彼は、「早く終わらせなきゃという思いが強かったので、余計集中できた」とも言った。

 第5ゲームでは2度デュースに持ち込まれるも、2本のエースを連ねて振り切る。以降は自分のサーブで、わずか1ポイントしか落とさない。ハイピッチで進む緊迫の展開がそうさせるのか、中断の気配がコートに差し込むこともない。この試合を......少なくとも第3セットを見届けたいという不思議な一体感がスタジアム全体を覆うなか、試合はゲームカウント5−4の最終局面を迎えた。

 このゲームをブレークすれば、試合が終わる――。そのような期待が錦織に向けられるなか、彼は集中力のネジをさらに巻き上げる。快音を轟(とどろ)かせるキリオスのサーブを打ち返しては、多彩なショットでポイントを奪った。

 3本のマッチポイントをしのがれるも、迎えた4本目のマッチポイント......最後はフォアの強打が、キリオスの豪腕を打ち破る。電光掲示板には『9:05』の数字とともに、錦織の勝利を示す6−1、7−6、6−4のスコアが光った。

 薄暮のなか大歓声を浴びる勝者は、客席に向けてガッツポーズを振り上げる。「彼に勝ったのはうれしかったです」と顔を輝かせ、錦織はこの一戦を、キャリアにおける芝での「トップのプレー」だと評した。

 錦織がウインブルドンのベスト16に勝ち進むのは、2016年以来のこと。会心の勝利の感触を手の平に残したまま"ミドルサンデー"を迎える彼は、聖地ではまだ踏んだことのない、ベスト8以上の高みを目指す。

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