2018.07.09

錦織圭、集中力のネジを巻きまくり。
「芝史上最高の出来」で快勝

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 両選手が1番コートに足を踏み入れたとき、すり鉢状のスタジアムの底にあるコートは完全に影に覆われて、観客席の一角だけが、西に大きく傾いた太陽の光に照らし出されるのみだった。

会心のプレーで2014年以来のベスト16入りを果たした錦織圭 夏至を2週間過ぎたばかりの、ロンドンの日はまだ長い。それでも午後9時を過ぎれば、夜の帳(とばり)があたりを覆い、試合継続は困難になる。伝統と格式のウインブルドン選手権では、大会中日(なかび)の日曜は安息日のため、試合は一切行なわれない。つまりは、もし土曜の試合が日没順延となれば、その続きは月曜日へと持ち越されることになる。

 ところがそんな日にかぎり、1番コートでは長く熱い試合が続いた。遅れる開始時間を知るたびに軽食とウォームアップを繰り返す錦織圭は、ある時点で、「もう今日中には終わらないな」と悟る。自身の陣営のみならず、対戦相手のニック・キリオス(オーストラリア)とも「終わるはずないよね」と言葉を交わしもした。

 それでも来たる試合に向け、準備は決して怠らない。30分ほど睡眠を取り、こわばる筋肉をほぐすため長めにウォームアップをした彼は、夜の7時を過ぎたころ、ラケットバックを担ぎコートへと向かった。

 試合が月曜日に持ち越されるだろうことは、7時27分の試合開始時点で、すでに覚悟できていた。だからこそ、「先にリードしておかないと」という気持ちを、強く抱いたと彼は言う。

 そのような状況理解が、錦織の集中力のネジを巻き上げた。ファーストサーブをすべて決める快調な滑り出しを見せると、続くゲームでは、キリオスの高速サーブをことごとく返してプレッシャーをかけた。鋭いリターンを相手の足もとに深く返すと、差し込まれたキリオスのショットはラインを越えていく。続くゲームもすべてのファーストサーブを入れた錦織が、ラブゲームでキープに成功。試合開始から3分で、スコアボードには3−0の数字が刻まれた。