また大坂なおみレベルの才能あらわる。
16歳の内島萌夏とは何者か? (3ページ目)
実力と経験に勝るベテランが、若い挑戦者を軽くいなす――。そのようなシナリオの終わりが見えたそのとき、ここから16歳の驚異の追い上げが始まることを予感できた者は少なかっただろう。だが、後がなくなり、「自分からフォアハンドで叩こう」と開き直った内島の強打には、それまでの流れを劇的に反転させる威力が宿る。
ベースラインから下がらず、高い打点で叩く内島のショットが次々に奈良のラケットの先をかすめていく。ウイナーの度に客席から沸き起こる驚嘆の声と、「まさか」の予感をまといながら、内島が5ゲーム連取で奈良を捉えた。
もつれこんだタイブレークも、内島が序盤でリードした。だが、余裕を持って打ったはずの甘いドロップショットが、結果的に最後のターニングポイントとなる。最後はバックのショットがラインを超え、内島の挑戦は1時間28分で終幕した。
表彰式でマイクを握り、まずは大会関係者たちに謝意を述べた内島は、奈良へと顔を向け、「奈良さん、おめでとうございます......」と言うと、そこからは溢れる涙に胸を塞がれ、言葉を続けられなかった。幾度も手の甲で目もとを拭い、「多くのことを今日の試合で学びました」となんとか絞り出した彼女は、涙声で、それでも力強く断言した。
「奈良さんのように、世界で活躍する選手になりたいです」
とめどなく落ちる涙の内訳は、「ここまで来られたことにびっくり」という驚きと、「いいプレーもあったし、課題も見つかった」という充実感。しかし、もっとも大きかったのは、「悔しい気持ち」だと彼女は言う。
「勝てたかもしれない」という悔いを抱え、同時に「相手にいろいろと考えさせるプレー」ができる奈良のすごさも肌身で感じた。それはジュニアの試合では知ることのない、新たな世界への扉である。
「観客がたくさんいて、今までと違った雰囲気のなかで試合ができた。こういうところで戦いたいと思いました」という彼女の世界ランキングは、今回の準優勝で400位を切り、戦いの舞台はさらに広がる。
6年前のこどもの日に本格的に歩み始めた内島萌夏のテニスキャリアは、16歳のこどもの日の翌日、大人への大きな一歩を踏み出した。
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