全豪の錦織戦がターニングポイント。フェデラーが復活の1年を振り返る (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 フェデラーが2017年シーズンを振り返る時、印象に残った試合のひとつとして、当時ランク5位の錦織圭と3時間24分におよぶ5セットを戦ったオーストラリアン(全豪)オープン4回戦を挙げる。

 あの時のフェデラーは勝利を決めた時、まるでグランドスラムで優勝したかのように大きなガッツポーズをつくり、雄叫びをあげながら喜んだ。

「ありとあらゆる物事が急激に、より早く(自分へ)好転しだした」と振り返るフェデラーは、昨年2月に手術をした左ひざの影響で、ランキングを17位まで落としていた。しかし、錦織からの勝利がトリガーとなって快進撃が始まり、7年ぶりとなるオーストラリアンオープン優勝へ駆け抜けていった、と言っても過言ではないだろう。

 さらに、ウインブルドンでのグランドスラム19勝目の達成へとつながる今季の華麗なる復活への手ごたえを、あの時につかんでいたのだとしたら、フェデラーのあの喜び方もうなずける。

 フェデラーは、ツアー最終戦での出場回数は15回(史上最多)だが、初出場したのは、2002年に上海で開催されたマスターズカップ(当時の大会呼称)で21歳の時だった。

 プロ駆け出しの自分を、「キャンディーショップで喜ぶ子供のようだった」とフェデラーは振り返る。大ベテランのアンドレ・アガシ(アメリカ)やフェデラーの同世代で世界王者だったレイトン・ヒューイット(オーストラリア)らトップ選手と、同じロッカールームを使ったり、彼らの試合への準備の仕方を見たり、一緒に練習をしたり、もちろん彼らと試合をすることさえも、フェデラーにとっては特別な時間だった。

「自分が若い時は、何もかもが新鮮でウキウキしていた。今は自分が年を重ね、次代の若い選手とプレーするようになった。いろんなことに対応してきた」

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