2017.09.05

もう苦しい涙はない。
伊達公子が戦いを求め続けた2年半の月日

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 彼女が公(おおやけ)の場で苦しい涙を流したのは、2015年1月の全豪オープンがおそらく最後だったろう。

 その前年から伊達公子は、左臀(でん)部の痛みに悩まされ続けていた。判然としない治療法に、回復のめどが立たぬ症状……。それらの不安を翌年にも持ち込んだ伊達は、全豪オープン初戦敗退後の会見の席で「すみません」と小さな声で詫びると、顔を両手に埋め、そのまましばらく微動だにしなかった。

「ジャパンウィメンズオープン」が伊達公子のラストゲームとなる「試合がどうこうというよりも、このケガから先が見えない、身体がついていかない日がずっと続いていて。それが年齢なのか、ケガなのか、気持ちなのか……。今回コートに立つべきかどうかすら考えたくらいで……」

 目を赤くした顔を上げた後は、そう言葉を絞り出すのが精一杯。思うように動かぬ身体を気持ちでつなぎ止め、当時の彼女は戦っていた。その気持ちが「いつブツっと切れるかわからない」ことをも、素直に認める。

「ただ”その日”が、確実に近づいていることは感じる……」

 約2年半前――真夏のメルボルンの会見室で、彼女は集まる報道陣を前に、そんな言葉をこぼしていた。