前人未到の全仏V10。ナダル圧勝の原動力は「毎日の不安」にあった (4ページ目)
「第3セットで4-1になったときは、勝利に近づいたと感じた。さらに5-1になったときは......OK、たぶん勝てるよ......って」
いたずらを告白する子どものような王者の照れた笑顔に、会見に詰めかけた記者たちからも、思わず笑い声が漏れた。
本人は数字を意識しないと言ったが、10度目の優勝はやはり、過去のそれとは違う感傷を彼にもたらしたのだろうか。ならばその理由は「前回優勝してから今回までの3年間、不安や恐れを抱きはしなかったか?」との問いに対する、彼の答えにあるのかもしれない。
「正直に話すよ。不安は毎日、感じていた。だが、それは悪いことではないと思う。不安こそが、より必死に練習し、より謙虚になり、さらなる上達を求める原動力になるのだから。
もちろん、この3年間ずっと不安だったよ。今だって、きっと数日後に僕は、また不安に襲われるだろう。テニスでは毎週試合があり、毎週異なる物語が始まるんだ」
10度の全仏オープンも、15度のグランドスラムタイトルも、次の瞬間には過去になり、新たな不安と挑戦がやってくる――。「そしてそれこそが」と、彼は言った。
「このスポーツの、すばらしい点なんだ」
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