前人未到の全仏V10。ナダル圧勝の原動力は「毎日の不安」にあった (2ページ目)
「過去は振り返らず、今日と明日に目を向ける」という姿勢こそが、彼を9度の全仏優勝に導き、今大会でも変わらず貫いた哲学だ。4月中旬のモンテカルロ・マスターズでクレーコートシーズンを走り始めたナダルは、この大会を皮切りにバルセロナ、そしてマドリード・マスターズの3大会で連続優勝。赤い土煙を巻き上げるかのような疾走はローマ・マスターズ準々決勝でついに止まるが、わずか1ヵ月の間に18試合を戦い、17の勝利を手にしていた。
ただ、この試合数の多さが、大会期間中に31歳を迎えるナダルのフィジカルを不安視する声にもつながっていく。
「全仏前に、試合をしすぎたのではないか?」
全仏2回戦後にはそんな質問も向けられたが、ナダルは穏やかな表情で答えた。
「たしかに多くの試合をしてきた。でもそれは、僕が勝ち上がっているからだ。それにつまるところ、僕は"テニスプレーヤー"だ。テニスプレーヤーとは、テニスをするものなんだよ」
そう言って笑うと、さらに彼は続けた。
「だから、たくさん試合をすることは、僕のキャリアにとっていいことだと信じている。テニスは僕を幸せにしてくれる」
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