楽天OP初戦で「よもや」の錦織圭。第1セットを落とすのも想定内? (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第2セットは早々にブレークで先行すると、すかさず主導権を掌握して危なげなく奪取。第3セットは序盤こそ競ったものの、第5ゲームで相手のサーブを破ると、以降は明らかに意気消沈したヤングに息を吹き返す隙を与えなかった。最終ゲームでも最速196キロのサーブをコーナーに次々と打ち込み、終わってみれば2時間に満たぬ試合時間で、勝利を手堅く掴み取った。

 試合後の錦織は、まずは「ホッとしました」と安堵の言葉を口にしたが、その表情や声色には、そこまでの重さはない。

「1試合目なので、簡単にいくとも思っていなかった。彼はテニスが噛み合えば怖い相手なので、今日みたいにセットも取られるだろうし。その怖さも試合前から持っていたので、しっかり準備して入れた」

 初戦で襲われる硬さも、このコートで戦うことの緊張感も知りつくしたうえで、手の内を知りつくした相手との対戦。錦織にとっては第1セットを落とすことすら、ある程度は想定内だったようだ。

 錦織圭というアスリートは、時にこちらが驚くほどに正直な人物である。「正直、負けると思いました」「負けることも覚悟した」......。そんな言葉を口にすることも珍しくない。その彼がこの日の試合後には、いつもの朴訥(ぼくとつ)とした語り口で言った。

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