これぞ勝率歴代1位。錦織圭が真価を示した「ファイナルセット」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 過去の対戦こそ3回――。しかも1回は錦織が第1セット途中で棄権しているため、実質的に戦ったのは2試合でしかない。それにもかかわらずフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)は、錦織圭の記憶に"爪跡"を残したテニスプレーヤーであるようだ。

強敵・ベルダスコをフルセットの末に破った錦織圭強敵・ベルダスコをフルセットの末に破った錦織圭 初対戦は、2011年の全豪オープン。この年の錦織はチームスタッフを一新し、守備と安定感を重視した新スタイルを携え、3回戦まで危なげなく勝ち上がっていた。しかし3回戦では、当時9位のベルダスコに2−6、4−6、3−6で敗退。左腕から繰り出される強打に圧倒され、試合後には、「完敗。何もできずに終わった感がある」と失意を隠せなかった。

 初勝利は、昨年3月のインディアンウェルズ・マスターズで訪れる。世界の5位まで成長し、4年前とは立場を大きく変えていた錦織だが、それでもフルセットの辛勝を手にしたときには、「今日の結果は素直に嬉しい」と声を弾ませた。

「ベルダスコは、何年か前に対戦したとき、ちょっとまだまだ勝てない選手だなと感じたので。その相手に自分が成長して勝っていくというのは、すごく楽しいチャレンジです」

 ベルダスコもまた、錦織に己の成長の喜びを感じさせてくれる、貴重な先達のひとりであった。

 それから、1年――。32歳を迎えた現在52位のベテランは、またしても錦織に厳しい"チャレンジ"を強いる。

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