錦織圭が「迷い」を振り落としたベルディヒ戦での分岐点 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 ベルディヒはブレークポイントで、ミスして自滅への坂道を転がり出した。対する錦織は勝利への執念を見せ、石にかじりつきブレークに成功する。それぞれが手にしたブレークポイントでの対照的な姿こそが、そのまま勝者と敗者を分けた。

 大切な場面でポイントを獲り切ること――。それはここ数ヶ月間、錦織が抱き続けていた課題だった。

「どこかモヤモヤしていて......。大切な場面でポイントが獲れていないことが、心に引っ掛かっていた」

 初戦敗退を喫した9月の全米オープン後の心理を、錦織は素直に口にする。2週間前のパリ・マスターズの3回戦では、7本のブレークポイントを1度もモノにできずに敗れた。その前の上海マスターズでも、セットポイントで消極的になり悔いを残した。錦織クラスの選手ですら、実績と自信の欠如はプレーに直結する。「モヤモヤ」の根源はそこにあった。

 この日の試合でも第2セットは、"モヤ"がふたたび錦織の会心のプレーを覆った。

 第1セットの錦織は、恐らくはここ数ヶ月で最高のプレーを見せた。対戦相手のベルディヒが過去3勝1敗と得意にする選手であることも、好プレーの要因だろうか。

「サーブを獲るのは大変だけれど、ストローク戦では、パワーはあるけれど何かしらできる相手」

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