錦織圭が「迷い」を振り落としたベルディヒ戦での分岐点
「今日の試合について、話すことはそれほどないよ。第3セットのひとつのポイント......ブレークポイントを逃した、あれがすべてだった」
憮然とした表情と口調でトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)は吐き出すと、他について語ろうとしなかった。錦織圭に力負けした第1セットも、圧巻のプレーで巻き返した第2セットも、彼にとっては、もはや大した意味を持たないようだ。
ツアーファイナルズ第2戦でベルディヒを撃破した錦織圭「あの場面での僕はいいラリーをしていた。最後の打ち合いでも、決めに行くために良いポジショニングもできていた。なのに、ミスをした。次のゲームでは圭がブレークした。それでおしまいだ」
ベルディヒが「すべてだった」と言うポイントは、第3セットのゲームカウント3-3で迎えた第7ゲーム。ボレーがネットに掛かって錦織のコートに落ちるラッキーショットもあり、ベルディヒが手にしたブレークポイント。攻めるベルディヒに、守勢に回される錦織......。しかしこの場面で、錦織いわく、「目をつぶって思い切り打った」フォアのストレートが鋭く刺さり、ベルディヒの返球はネットに掛かる。
九死に一生を得た錦織は最大の危機を切り抜けると、次のリターンゲームでは気落ちしたベルディヒのダブルフォールトに乗じて反撃に出る。手にしたブレークポイントでは、左右に振られても必死に食らいつき、スライスや中ロブなどあらゆる手を尽くして猛攻をしのぎにしのいで、最後は相手のミスを誘った。
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