昨季クレー勝率80%超え。データで見る錦織圭の成長度

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 重く閉ざされていた「トップ10」への扉を最初に開いたのは、初夏の欧州――赤土の上だった。

 1年前の5月中旬。マドリードオープンの準々決勝でフェリシアーノ・ロペス(スペイン)を6-4、6-4で破ったとき、錦織圭は悲願のトップ10入りを確実にしたのである。同時にこのロペス戦での勝利は、この年クレーで連ねた9つ目の白星でもあった。昨年の錦織は、4月下旬のバルセロナオープンでスタートを切ったクレーコートシーズンで、負け知らずの連勝街道を疾走していたのだ。

昨年クレーコートで怒涛の快進撃を見せた錦織圭昨年クレーコートで怒涛の快進撃を見せた錦織圭「あれは、自分でも衝撃的でした」

 最終的に10まで伸びたクレーでの連勝を、世界ランキング4位となった今、錦織は眩(まぶ)しそうに振り返った。その日々から時は巡り、この2015年もまた、赤土の季節がテニス界に訪れる。4月20日、バルセロナオープン開幕。昨年クレー初勝利を飾った地に、錦織が再び足を踏み入れる。

「ランキングは、本当になんとも思ってなくて」

 今年2月に初めて自己最高位の4位に達したとき、錦織は色めき立つメディアに対し、幾分すまなそうな苦笑を浮かべてそう言った。

「ランキングが変わったからと言ってそんなに深く考えていないので、いつも通りプレイすることを心がけています」

 4月に再び4位に浮上したときも、表情を変えずに淡々と述べた。

 それらの言葉に、嘘はないだろう。だからと言って、錦織が上を目指していないはずはない。彼がランキングに無関心なのは、今となってはその地位のひとつふたつの上下動が、単なる数字のあやであることを知っているからだろう。今の錦織にとって唯一の関心は、もっと良い意味でシンプルで、はるかに純粋な想い。誰よりも強くなりたい、追い求める理想のプレイをコート上で描きたい――。それに尽きるはずだ。

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