今季、棄権ゼロ。錦織圭が語る「ケガに強くなった要因」
「ローマと錦織圭」というと、思い出される挿話がある――。2008年のデルレイビーチ国際で衝撃のツアー初優勝を果たした時、当時のコーチが満面の笑みを浮かべながら明かしたエピソードだ。
「圭が最近、僕に『いつヨーロッパ遠征に行けるかな』と聞いてきたんだ。『なんで?』と聞き返すと、食べ物が楽しみだと言う。ウインブルドンがあるぞって言ったら、『ノーノー。イングランドのフードはダメだよ』だって。イタリアに行きたいと言うから、『ローマでチャレンジャー(下部ツアー大会)があるけれど、飛行機代が高いぞ』と言ったら、『じゃあ我慢する』って言ってたよ」
今季の錦織圭は一度も欠場することなくローマにやってきた 当時の錦織は18歳――。デルレイビーチで優勝した時のランキングは244位。アメリカ国内や南米の大会を中心に回っていた当時の彼にとって、ヨーロッパは遠い憧れの地であった。
月日は流れ、飛行機代の高さゆえにローマ遠征をあきらめたプロ駆け出しの若手も、今や世界中の大都市が訪れを心待ちにする「テニス界の顔」となった。マスターズ・ローマ大会はもはや、本人が望むと望まざるとにかかわらず、出場が義務づけられた大会である。
そのような位置づけの変遷を持つローマであるが、錦織がこの地のマスターズに出るのは、今回がまだ3回目。初出場の2011年は予選を勝ち抜いたものの本戦は病欠したので、本戦に限れば2013年に次いで2度目の出場である。昨年は、前週のマドリード大会で準優勝してランキングも9位に達したが、連戦で負ったケガのために欠場。ローマは錦織にとって、最も苦しめられている大会のひとつとなっている。
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