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「錦織記念日」に振り返るツアー初優勝。7年前の真実 (6ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 そしてもうひとつは、今や彼の代名詞にもなっている“エアK”こと、ジャンピングショットの衝撃だ。コーチのワイナーが言う。

「最初にあのプレイを見たときは、おいおい、と思った。でも、僕がコーチになって以来、ケイは一度もジャンピングショットをミスしなかったんだ。だから、どんどんやれと言った。あんなに綺麗にボールをとらえる選手は見たことがなかったからね」

 また、決勝で敗れたブレークも、コーチの言葉を裏付ける。

「彼が試合でジャンピングショットを打ち始めたときは、正直、もっと打てと思っていた。いずれはミスするだろうと思ったんだ……。練習ではともかく、実戦であんなに決められるのはすごいよ。僕には、あんなショットは打てないな」

 痛恨の敗北を喫した人格者は、ここでも対戦相手を素直に称えた。

 対戦相手や報道陣を驚かせ、日本のみならず、世界のテニス界が新星登場に沸き立ったあの日から、7年の月日が経った――。ジェームズ・ブレークはツアーを去り、グレン・ワイナーは現在IMGアカデミーのジュニアコーチとして、日本から留学中の中川直樹や福田創楽らの指導にもあたっている。そして、錦織にプレイが似ていると言及されたノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、当時の世界3位から1位に上り詰め、今や男子テニス界に君臨する王者だ。

 あの日、フロリダの空の下でトロフィーと日ノ丸を掲げた少年は、その後も幾度かの挫折と、歓喜の瞬間を重ね、ツアータイトルは現在までに8個を数える。

 2015年2月17日――。錦織圭、25歳。

「勝てない相手は、もういないと思う」

 朴訥な口調に静かな矜持を込める青年は、世界のナンバー5である。

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