2015.02.17

「錦織記念日」に振り返るツアー初優勝。7年前の真実

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 現地2月15日、アメリカにてメンフィス・オープンのシングルス決勝が行なわれ、錦織圭が今季ツアー初優勝を挙げた。世界ランキング5位という立場で挑み、メンフィス・オープンでも第1シード。いまや錦織は、誰も疑うことのないトップ選手のひとりだ。しかし7年前、錦織は世界ランキング200番台の無名選手だった。当時18歳の青年が初めてATPツアーを制したのが、今からちょうど7年前の2月17日――。その瞬間を現地で見ていたライターが、当時を振り返る。

ATPツアー初勝利を手にした当時18歳の錦織圭 極寒の日本から約1万2000キロ離れたフロリダ半島のデルレイビーチでは、潮風を含んだ空気は身体に重くまとわりつき、激しい太陽の光が肌を刺す。その時、彼は突如、目の前に現れた栄光に慌てふためいたようにしゃがみ込み、日の光に輝く満面の笑みには、驚きと、かすかな狼狽の色が刺した。マイクを手にし、テレビと複数のカメラレンズを向けられたコートの中央に立つと、試合前に用意したスピーチの言葉は干上がって蒸発し、青空へと消えていった。

「テレビでしか見たことのない選手に勝てるなんて......信じられない」

 なんとか絞り出したその言葉は、心の中にあった未加工な想い、そのままだ。

 2008年2月17日――。錦織圭、18歳。

 ツアー初優勝の感激を饒舌(じょうぜつ)に語るには、彼はあまりに若く、その快挙が細胞の隅々まで喜びとして行き渡るには、あまりに突然すぎた。