2014.09.19

神尾米が語る「錦織圭という少年のファーストインパクト」

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva 真野博正●写真 photo by Mano Hiromasa

 全米オープン準決勝で世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチを下し、日本人として史上初めてグランドスラムのシングルス決勝に駒を進めた錦織圭。惜しくもグランドスラム初優勝は逃したものの、歴史的快挙に世界中が驚愕した。現地でその快進撃を目撃した元テニスプロプレイヤーの神尾米氏に、錦織の思い出を振り返ってもらった。

全米OP準決勝でジョコビッチを破り、感情を爆発させる錦織圭
テニスっぽくなかったフットワーク

 私と錦織圭選手の個人的な思い出は、15年ほど前……、彼が小学校4年生くらいの時だったと思います。島根県の運動場のオープニングイベントか何かがあり、私はそこにゲストとして出席しました。その時に、「すごい子がいるので」と紹介されてボールを打ったのが、錦織選手だったんです。

 正直、その当時の記憶はうっすらとしか覚えていなかったんですね。でも数年後、錦織選手がそれを私に言ってきてくれたんです。「昔、神尾さんと打ったんですよ。覚えていますか?」って。も~、必死で記憶を呼び戻しましたね(笑)。巻き戻して、巻き戻して……、それで、「ああ~! 打った、打った!」って、私もようやく思い出しました。そのころの錦織選手はすでにツアーで戦っていたプロ選手だったので、そんなふうに覚えていてくれたことを、すごく嬉しく思いました。

 ただ、プレイヤーとしての錦織選手に鮮烈な衝撃を受けたのは、再会した時よりも前のことでした。2006年、彼が全仏ジュニアのダブルスで優勝した年に、シングルス決勝を控えたラファエル・ナダル(スペイン)の練習相手を務めたんです。最初にその話を聞いた時は、ビックリしました。ナダルの練習相手に指名されるなんて、どんな子だろうと気になったんです。

 そうして実際に見たのですが……、もう驚きました。「なんてすごい動きをする子なんだろう!」って。フットワークが、あまりテニスっぽくなかったんですよね。それまで、日本での常識的なテニスのフットワークは、しっかりと足で地面を掴む感じだったんです。でも彼はもっと、つま先のほうに重心が掛かっていました。一度、走り始めてからはしっかりと地面を蹴るのですが、ベースライン上や、打った後の次の動きなどは、つま先立ってスタートを切る感じなので、最初の数歩が素晴らしく軽くて速いんです。「え~っ! 面白い動きだな~」って思いました。