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神尾米が語る「錦織圭という少年のファーストインパクト」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva 真野博正●写真 photo by Mano Hiromasa

 あと、良い意味でまったく萎縮していないのも驚きでした。当時の錦織選手はまだ16歳で、相手はナダルですよ!? 普通なら、緊張してミスの連続です。それなのに彼は、なんということなく、普通に打ち合っている。それもすごく印象的でしたね。

 また、フォアハンドのグリップも独特でした。手の平で打つというより、手の甲でボールを捕えるような握りで、普通は、あのような打ち方は教わらないです。恐らく日本のコーチで、あの打ち方を小さい子に教える人はいないでしょう。たとえば、私がテニスを習ったころは、ラケットを振り抜いた後は必ず顔の横まで腕を持ってくるように教わりました。でも、彼は違いましたね。彼には、その打ち方が一番感覚的に良かったのでしょう。振り抜きの位置からフットワークまで、すべてが自由だなと思いました。

メンタル面を大きく変えた、マイケル・チャンの存在

 プレイ面を振り返ると、18歳~20歳くらいのころの彼は、独創的なテクニックはあるけれど、体力や精神面では安定感を欠く印象を受けました。そのころの彼は、負けてしまうと悔しさからか、たとえ相手がナダルでも、試合後に相手の目を見ずに握手をしていたように見えました。それくらい強い気持ちを持っているんだろうなと思いましたが、同時に、悔しくても相手を称えるような振る舞いを見せることも必要なのでは.......と思うことがありましたね。

 マイケル・チャン・コーチに指導を仰ぐようになって一番変わったのは、そのようなメンタル面での安定感ではないでしょうか。それに伴い、練習中の態度や、試合のチェンジコートでの歩き方すら変わってきたと思います。これまでにも、他の人たちから同じことを言われてきたかもしれませんが、やはり尊敬するマイケル・チャン・コーチの言葉は、心に響いているのだと思います。

 それにマイケル・チャン・コーチからは、「どんな選手が相手でも、絶対に勝てると思って挑まなくてはいけない」という言葉を、しつこく、しつこく言われていると聞きました。それも、彼の言うことだから聞けるし、今の錦織選手にとって必要な部分だったからハマったのだと思います。全米オープンでの記者会見でも、「勝てない相手は、もういない」という発言がありました。それは、自信がついてきた表れだと思いますし、実際に試合を見ていても、本人がそれを実感できているだろうなと感じます。

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