2014.03.30

マイアミの奇跡から一転。錦織圭はなぜ「棄権」を決断できたのか?

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 日本のみならず、世界のテニスファンに衝撃と夢を与えた錦織圭(世界ランキング21位)のマイアミでの快進撃は、世界ランキング2位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)戦を棄権するという形で、唐突な幕切れを迎えた。棄権を決断した理由は、左股関節の炎症による痛み。これは、先月出場した大会(デルレイビーチ国際テニス選手権)で負ったもので、3月上旬のBNPパリバオープンの時にもまだ痛みはあったという。その後も、「治ったり、痛くなったりが続いて……」という状態であったが、3月18日にマイアミで開幕したソニーオープンの前には、ほぼ痛みを感じないまでに回復していた。

ソニーオープンでベスト4に進出するもジョコビッチ戦を棄権した錦織圭 そうして出場した今大会では、3回戦で第15シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア/世界ランキング16位)、4回戦では第4シードのダビド・フェレール(スペイン/同4位)のシード選手を次々に撃破して上位へと進出。準々決勝では、「史上最高のプレイヤー」、あるいは「生きる伝説」とまで称されるロジャー・フェデラー(スイス/同5位)をも破って、ベスト4へと駆け上がったのである。これまでにも錦織は、対戦当時世界2位のフェデラーや、1位のジョコビッチから勝利を奪ったことはある。だが、ひとつの大会でトップ5の選手を複数破ったのは、今回が初めてのこと。本人の「今までで一番と言えるくらい、良い1週間だった」との言葉どおり、「Kei Nishikori」の名を鮮烈に世界に刻んだ7日間であった。

 ソニーオープンは「マスターズ1000」と呼ばれる、グランドスラムに次ぐグレードの大会である。上位選手は、ケガなどの事情がない限りすべて参戦しているため、「顔ぶれ」という意味ではグランドスラムにまったく引けを取らない。そのマスターズ1000で達した今回のベスト4進出は、2012年に錦織が成し遂げた全豪オープンベスト8に匹敵する……あるいはそれ以上の価値を持つものだ。

 そのような評価は、単に「ベスト4」という数字のみを見て言うのではない。今大会の錦織のプレイや戦績を子細に追えば、彼のテニスの土台そのものが、より強固で、より高く築かれたことが明確に見てとれるからである。