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【テニス】なぜクルム伊達は全豪で3回戦まで進めたのか? (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi  photo by Ko Hitoshi

「自分のテニスの質が上がって、予選でしっかり戦える状態で、1月に入れればいい」と語っていたクルム伊達の13年シーズンのスタートは上々で、WTAシンセン大会とシドニー大会で予選を勝ち上がり、シドニーでは本戦1回戦も勝利して、クルム伊達は自分のテニスを取り戻しつつあった。

「序盤でこれだけ試合数(8試合)をこなせるのは、もちろんプラスになるし、自信にもつながっていく」

 また、今回のクルム伊達の快挙は、昨年夏から取り組んできた、ひたすら自分の体と向き合うコアトレーニングの成果が出た形となった。体にあまり負担をかけずに、自分の持っているものを最大限に使うことをテーマとしたトレーニングの中で、クルム伊達の体にいい方向への変化が起こっていた。

「体のキレが戻った。心肺機能などスタミナの不安もない。(試合が続けば)疲れは溜まるけど、それなりに回復できる」

 昨シーズン、ケガに泣かされたクルム伊達の心の中には、ケガがなく、体さえ動けばいいテニスができるはずだという思いがいつもあった。だから、自分が納得できないテニスのままラケットを置くことなど、彼女のプライドが許さなかった。

 メルボルンでは、単複合わせて毎日試合を行なってきたクルム伊達は、42歳の体がどこかで悲鳴をあげるかもしれないという不安を依然として抱えていた。

「今たまたま、このグランドスラムで、いい状態といいテニスが合わさったことが奇跡的に起きている。10代や20代の選手でも、何かしらのケガを抱えて戦っているので、ましてや私が......。疲労が蓄積して回復しきれないことが明日起こるかもしれない」

 その不安は現実となった。シングルス3回戦で、クルム伊達は右アキレス腱が固まったような状態で、テーピングをしてのプレイを強いられ、4回戦進出はならなかった。

 ケガに対しては、昨年の苦い経験を踏まえ、彼女なりに対策を考えている。ツアーを回っていると、つい少しでも多く無理に戦おうとして、大きなケガにつながった過去を踏まえ、今シーズンは、たとえ目の前の戦いを犠牲にしてでも、「プレイしない勇気」が必要だと感じている。

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