【テニス】
「まだ通過点」。現役続行を決意したクルム伊達公子の戦略 (2ページ目)
選手のWTAランキングは、過去52週(1年間)で出場した大会のうち、より多くのポイントを得た16大会を抽出して、その大会で得たポイントの合計で決まる。だが、グランドスラム4大会とプレミア・マンダトリー(インディアウエルズ、マイアミ、マドリード、北京)でプレイした場合は、ランキングを決定する際には結果にかかわらず必ずポイント対象となる。さらに、マンダトリーよりワンランク下の「プレミア5」でプレイした場合も、2大会(シンシナティと東京)も同様にポイント対象となる。
2012年シーズンのクルム伊達は、グランドスラム4大会すべてで初戦負け、マイアミと北京でも1回戦負けだった。さらに、プレミア5では、シンシナティで予選初戦敗退、東京で初戦敗退だった。ポイント計算上、成績の良し悪しにかかわらず対象となる10大会のうち、クルム伊達が2回戦に進出できたのは、インディアンウエルズだけだった。
つまり、グランドスラムとプレミア・マンダトリーで初戦負けすると、それぞれ5点しかランキングポイントを獲得できない(プレミア5は1点)。その5点より、予選を勝ち上がって得られるポイントが重要になるとクルム伊達は考えているのだ。
「ランキングシステムの中で、自分のテニスの調子を上げるために、どうすればいいのか。今の自分のテニスと位置を考えると、(ストレートインで)本戦1回戦負けよりは、予選でもまれる方が、自分にとってはプラスになる」
グランドスラムなどでの経験が豊富だからこそできる、あくまでもポジティブに、中長期的な視野で反転攻勢を狙う"クルム伊達流"のしたたかな戦略といえる。
こうした"覚悟"を持って臨んだツアー下部のITF豊田大会「ダンロップ・ワールドチャレンジテニストーナメント2012」で、クルム伊達は2年連続の準優勝。2回戦や準々決勝では、腰やでん部に違和感を覚えメディカルタイムアウトを取る場面が見られたが、決勝に勝ち残った。
「最近は決勝で勝てないことが続いている。このレベルでは当然簡単にはいかないけれど、シーズン終盤に来て(インドに続き)2大会連続で決勝に来られたということは、時間が経てば大きな収穫と思えるのかな」
「今年は、オフがないつもりでいる。突き進めるだけ、突き進む」と語るクルム伊達は、決勝直後の夜に、ITFドバイ大会に出場するため機上の人となった。5年目を迎えている現役再チャレンジを続ける意志に変わりはない。
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