【テニス】「まだ通過点」。現役続行を決意したクルム伊達公子の戦略

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

ITF豊田大会で準優勝したクルム伊達公子。来季も現役を続行することを明言したITF豊田大会で準優勝したクルム伊達公子。来季も現役を続行することを明言した
「正直、来年は(グランドスラムの)本戦に入りたくないです」

 瞬時には、クルム伊達公子が発したその言葉の真意がわからなかった。

 現在、WTAランキング121位のクルム伊達公子が、2013年1月のオーストラリアンオープン(全豪)に出場するとなると予選からの可能性が高い。今まで予選を回避したいと言っていたクルム伊達だが、彼女のこの発言をどう捉えるべきなのだろうか。

 グランドスラムの予選を3試合戦って本戦に進むことは、当然体力も精神力も要するもので、日頃から体力の回復力が若い選手より劣ることを自覚しているクルム伊達にとって、予選は回避したいはずのものだった。

「昨年は、全豪の本戦からというこだわりがありました。当然体力的な問題を考えると厳しいから」

 しかし、今のクルム伊達は、来シーズンに再びランキングを上げるために、予選からの戦いも辞さないという。

「細かい話ですが、1年間のトータルで考えると、5点(※)が邪魔なんです。もちろん本戦に(ストレートで入って)いたいという気持ちはみんな持っていると思うけど、考え方によっては、予選もありなんじゃないか。それが、いつかプラスになるんじゃないかな」

※グランドスラムやそれに次ぐグレードの「プレミア・マンダトリー」で本戦から出場した場合、初戦敗退時に得られるランキングポイント。WTAランキングの計算をする際に必ず換算しないといけない。ただし、予選から勝ち上がるとその時点で、グランドスラムでは60点、プレミア・マンダトリーとプレミア5では30点を獲得することができる。

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