エディー・ジョーンズ独占インタビュー 日本に戻ってきた理由を語る「初戦のイングランド戦はいい皮肉」 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

――アタックでは「インモーション」だけでなく、「ライブアタック」という言葉も聞かれます。

 モメンタム(勢い)を得てチャンスを作り出せば、すぐに相手のディフェンスラインにどんどんと仕掛けていく。フォーメーションでプレーするというより、どんどん相手に畳み掛けていくようなラグビーで、ポッド(選手を横幅に合わせて配置する戦術)でポジションにセットするわけではなく、ボールの位置に合わせて、ボールのモメンタムのスピードに合わせてプレーしていくというコンセプトです。

 フォーメーションではなく、ボールがどこにあるかによってアタックを設定しています。どちらかというとサッカーのようなイメージです。サッカーだと3-4-3といったようなフォーメーションでプレーすることがあると思いますが、相手のディフェンスラインを突破したときには関係ない形になっていく。それと同じように、どんどんとボールがあるところでプレーをしていく。伝統的にジャパンが得意だったところはそこだと思っているので、そういったアタックを取り戻していきたい。

――前回、日本代表を率いていた2012~15年は、ボールを継続することに重きを置いていました。今は、モメンタムに乗ったら少ないフェーズでトライを取り切りたい?

 スポーツそのもの、ラグビーそのものも変わってきています。ディフェンス(の潮流)も変わっていますし(ボールを継続して)長いフェーズでプレーするようになるのは、(強化の)サイクルの一番後です。自分たちの成長があってキャパシティが備わってきたころにはできるかと思いますが、現状ではそれにふさわしいフィットネスがまだ足りていない。

 2012年から2015年の頃を振り返ると、W杯の直前までなかなかプレーがまとまってない部分もあった。選手たちには、ユニークなラグビーをしろと要望しているなかで、フィジカル面では非常に疲弊する試合になってくる。そうなると、積み重ねて習得していくのは時間がかかると自覚しています。それまでは、ここはうまくいった、でも次はここだといった形で、要所、要所でいいプレーというのは見られるかもしれませんが、2026年あたりには自分たちがまさにプレーしたい形が、継続的に一貫性を持ってできるかなと思います。


■Profile
エディー・ジョーンズ
1960年1月30日生まれ。オーストラリア人の父と広島県にルーツのある母を持つ。ラグビー選手として活躍後、数々の代表、クラブチームを指揮し、2012年にはラグビー日本代表のヘッドコーチに就任。2015年ラグビーワールドカップでは初戦で強豪国の南アフリカと対戦し、見事勝利を収めた。歴史的な勝利は「ブライトンの奇跡」と呼ばれ、社会現象を巻き起こした。その後、イングランド代表、オーストラリア代表を歴任し、2024年から2027年までの4年間、再び日本代表の指揮を執ることとなった。

プロフィール

  • 斉藤健仁

    斉藤健仁 (さいとう・けんじ)

    スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。

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