ラグビーの日本女子がアイルランド撃破。20歳のFB松田凛日が父親譲りのランで2トライと活躍「遺伝ですかね」 (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke

父の松田努さん「よくやった」

 松田は小学3年でラグビーを始めた。「小学生の時は家の前でパスとかステップの練習を父と一緒にやっていました」と振り返る。でも、父の現役時代の録画映像は見たことがないそうだ。ラグビーに関するアドバイスはほとんどないという。

 父の松田努さんはラグビーW杯に4大会に出場し、日本代表のキャップ(国代表戦出場)は「43」を数える。でも、娘にラグビーを無理強いすることは決してなかった。父はこの日、スタンドから雄姿を見守った。父は言う。短い言葉に愛情がにじむ。

「こまかいことを言えば、いろんな課題はあるけど、よくやった。しっかり、トライをとれたのはよかったんじゃないでしょうか」

 松田凛日はまだ、サクラフィフティーンで5キャップ目。父と同じ背番号「15」は2試合目にすぎない。ただ、さらに飛躍する可能性を示した。父に似ているのは、ランスタイルだけではない。トライの嗅覚。そしてディフェンスでの献身的な動き、コンタクトエリアでもからだを張るところはそっくりだ。ついでにいえば、誠実なメディアとの対応も。

HC「松田は、おもろかった」

 試合後の記者会見。松田の活躍について聞かれると、サクラフィフティーンのレスリー・マッケンジーヘッドコーチ(HC)は日本語で「ほんとうに、おもろかった。すごくワクワクする選手です」と言った。

「どこが、おもろいのですか?」と聞けば、今度は英語で続ける。

「セブンズで長くやってきたから、バックフィールドをカバーできる能力が高い。足のはやさ、長いリーチを使って、ディフェンスでカバーできる。アイルランドはキッキングゲームが強いチームなので、ディフェンスのカバーをうまくしてくれるところがおもろいと感じました」

 才能は文句なしだ。課題は、試合経験、すなわち状況判断か。ケガ予防の体調管理、コンディショニングもだろう。昨年のセブンズの東京五輪は一度日本代表に選ばれながら直前のケガでメンバーから外れた。

 サクラフィフティーンは9月24日、オークランドの"ラグビーの聖地"イーデンパークでニュージーランド代表(世界ランク2位)に初めて挑戦する。その後、W杯ニュージーランド大会(10月8日開幕)に出場することになっている。松田は彼の地に思いを馳せる。

「先輩方が積み上げてきたものがあるから、こうやって大きな舞台でやらせてもらっていると思う。すごくありがたい気持ちになりました。ワールドカップに向けて、自分の強みを伸ばし、課題の状況判断を修正し、もっと、もっと向上させていきたい」

 まだ成長途上。20歳の松田もまた、己とサクラフィフティーンの新たな歴史を紡ぐのだった。

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