エディー・ジョーンズは後半重視でNZ撃破
「フィニッシャーを先に決めた」 (2ページ目)
そこでジョーンズHCはフィジカルを徹底して強化してきた。この日はFW勝負に出た。スクラムで押した。コラプシング(故意に崩す行為)の反則も奪った。ラインアウトでは圧倒した。相手が得意なモールで押されなかった。ブレイクダウンでは、結束して対抗し、圧力をかけつづけた。相手に、早いタイミングの"生きた"球出しを許さなかった。
加えて、精神的に対抗すること。相手を過大評価しないこと。キックオフ直前、NZの選手がいつもの儀式『ハカ』をやろうと三角形の布陣をつくったとき、イングランド選手はその先端部分を飲み込むように"Vの字"のカタチにならんだ。
スタンドがどよめく。主将のCTB(センター)オーウェン・ファレルは含み笑いを浮かべながら、一歩前に出た。そう見えた。主将が振り返る。
「自分たちとしては、(ハカの時)そこにただ立って、受けるだけはしたくなかった。相手に敬意を表しながらも、フラット(平坦な)ラインではなく、とがったバー(棒)でハカを受けようと思った」
奇策のキックオフだった。右を向いていたSO(スタンドオフ)ジョージ・フォードがボールを隣のCTBファレルに手渡し、左サイドにドロップキックした。直後のラインアウトからボールを密集の近場、オープン、そして右に左につなぎ、最後はCTBマヌ・ツイランギがポスト右に飛び込んだ。電光石火の先制トライ。電光掲示はまだ「1:39」だった。
タテに強いSOフォードならではの連続攻撃か。ラックの近場を突くタテ突破、アングルチェンジが効いていた。よくみれば、からだのでかいフロントロー陣3人がいずれもボールを持ち込んでいた。
チームの攻めに勢いをつけるため、FWを絡めていく作戦だった。守備では相手の勢いをそぐため、日本代表HC時代にも徹底した攻撃的ディフェンスを見せた。猛タックルでNZのつなぎを寸断した。
とくにFL(フランカー)サム・アンダーヒルの猛タックルたるや。後半中盤、相手のエース、FB(フルバック)ボーデン・バレットを一発で仕留めた。斧のごとき猛タックルだった。
キックの対応もスキがなかった。束となったブレイクダウンの圧倒。ピンチを広げることになるPK(ペナルティーキック)は相手11個に対し、約半分の6個だった。
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