2019.09.21

「フェラーリ」松島幸太朗が爆走。
日本はグローカル力で勝利を掴んだ

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 もう感無量である。ラグビーのワールドカップ(W杯)が始まって32年、ついにその世界大会が日本にやってきた。歴史に刻まれることになる開幕戦。多国籍のメンバーで編成された日本代表が「ONE TEAM(ワンチーム)」となり、ロシアを30−10で倒して、幸先のよいスタートを切った。

3トライを挙げて、日本の勝利に貢献した松島幸太朗

 満員4万6千で埋まった東京スタジアムが興奮のるつぼと化した。試合前の国歌斉唱。「君が代」を歌いながら、ナンバー8の姫野和樹やPR(プロップ)具智元は泣いていた。気負いからか、開始直後、日本はキック処理をミスし、ロシアに先制トライを許した。

 その流れを変えたのは、WTB(ウイング)松島幸太朗の快足だった。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は試合後、笑顔で振り返った。

「松島はいいパフォーマンスを見せてくれた。外からフェラーリが突進していくようだった」

 前半11分。ラインアウトからフォワードがタテを突き、右、左に展開、SO(スタンドオフ)の田村優がボールを右に回す。タックルを受けたCTB(センター)ラファエレ ティモシーの絶妙なノールックパスからFB(フルバック)ウィリアム・トゥポウにつなぎ、右端でもらった松島がインゴールに飛び込んだ。

 その後も自らの足で2トライを重ね、この日、ハットトリック(3トライ)を挙げてみせた。切れ味の鋭いラン、トライをとる嗅覚はもちろんだが、ボールをもらうタイミング、スペースをつくる動きが光っていた。

 じつは、松島は2日前、CTBの中村亮土にハットトリックを宣言していた。いや、約束させられていた。代表初の1試合3トライに「すごくうれしかった」と顔をくしゃくしゃにした。有言実行を照れながら説明する。

「中村亮土さんに言わなかったら、もしかして、(3トライは)できなかったかもしれません。試合中、ハットトリックを意識しながらプレーできました。その言葉が助けになったのかもしれません」

 その意識とは。

「しっかり外のスペースを見て、どこにスペースが空いているのか、内側(の選手)に伝えることができました。途中、ノックオンだったり、ミスだったりがあったので、なければ、チームとして、もう少しトライがとれたのかなと思います」

 松島が、前回のラグビーW杯イングランド大会で番狂わせを演じた南アフリカ戦に先発出場してから4年。すっかりたくましくなった。経験値が上がり、「周りを見ることがしっかりできるようになった」という。コミュニケーションがとれるようにもなった。リーダーグループの一人として、責任感が増した。