ニュージーランドをもっとも知る男、田中史朗が語るオールブラックス (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 キックを蹴ってそのままボールをキャッチしたり、相手のボールを奪ってからの速攻が、今の日本代表の武器となっている。ハイランダーズ時代からジェイミー・ジョセフHCとともに戦っている田中もそれを十分に理解しており、「ディフェンスで我慢して粘り強さを出し、ボールをターンオーバーしてから、しっかりトライを獲っていく形を出して勝負したい」と気合いを入れた。

 9月の和歌山合宿、そして10月の宮崎合宿と、日本代表は両合宿で大いに走り抜いた。とくに宮崎合宿では第1週目に4部練習を敢行し、午後は45分~50分ほとんど休憩もなく「アタック&ディフェンス」を行なった。

「1日だと別府でやったサンウルブズの合宿がしんどかったですし、長期ならエディー(・ジョーンズHC)時代ですが、1週間だったらラグビー人生のなかで今回が一番大変でした!」

 田中は今回の合宿の過酷さを、過去の思い出を振り返りながら比較した。

 ジョセフHCがそこまでハードな練習を課した狙いは、今回のオールブラックス戦のためだけではない。11月17日に対戦するイングランド代表といった世界的強豪と今後戦っていくためには、メンタル面の強さを身につけること、そして心拍数が上がったつらい状態でも正確な判断をし、一貫性のあるプレーをすることにある。

「強いチームほど、相手の穴(隙)は小さい。ただ、フィットネスを上げることによって、その穴が空いている時間が長くなる。だから、もっとフィットネスを高めていけば(勝てる)可能性が広がる」(田中)

 10月26日に行なわれた世界選抜との試合では、後半序盤で7-31と24点差をつけられたものの、その後は3トライを重ねて28-31まで追い上げた。「テンポを上げようと意識した」という田中は後半途中から出場し、日本代表のアタックを老獪にリード。密集周辺でのFWの使い方や咄嗟の判断力は、いまだ世界トップレベルであることを示した。

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