【ラグビー】清宮克幸が語る「W杯でジャパンが勝つためにすべきこと」 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●文 text by Saito Kenji
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

――2010年度、ヤマハは入替戦に回っていました。そういうチームを率いることは清宮監督にとって新しいチャレンジだったのではないでしょうか?

清宮 特別なチームの監督になったということはありませんでした。ただ、私にチャレンジする場所を与えてくれたという方が大きかったです。
 そして、こんなに面白い4年間はありませんでした。1年目のシーズンは「入替戦に回った11位のチームが優勝するなんて、ヤマハにしかできないぞ」と。2年目も「8位から優勝できたら最高だな」と言っていました。常に日本一というところを意識して、戦うことができていました。実際のところ、1年目と2年目はトップ4との差を感じていましたが、3年目くらいから、差がないと感じていましたね。
 
――清宮監督は「ラグビーは戦略性のスポーツ」とおっしゃっていて、勝つための大きな要素としてヤマハのスクラムを強化しました。

清宮 ヤマハは総合力で比較すると、他チームの選手たちに勝てない。だけど、自分たちの強みを全面に出せたときは、どのチームよりもいいパフォーマンスが出せるということを、日本選手権の優勝で証明することができました。ふつうに考えると、身長が190センチで100メートルを11秒台で走る13番(センター)がいるチームが有利ですが、168センチの13番がいるようなチームも勝てるところがラグビーの魅力の一つです。
 こういったことは、日本代表が世界に勝つチームを作ることにつながるかはわかりませんが、チームが大切にしているもの、スタイルを守り切る意識、覚悟のようなものが必要です。ヤマハにとってはそれがスクラムです。これだけは絶対に譲れないものがあるから、チームに芯ができるという考え方です。
 日本代表では、今、元フランス代表のマルク・ダルマゾがスクラムを指導していますが、ワールドカップではスクラムの強いジョージア(グルジア)などと対戦しないので、日本代表はスクラムの強化にそれほど時間をかけていないように思えます。つまり、一年中スクラムを考えている選手はほとんどいないということになりますね。対戦相手によって強みを変えていくのは、自分たちのスタイルではありません。ヤマハは最初からチーム作りの根っことして絶対スクラムでは負けない、スクラムを軸にチームを作っていくと決めました。

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