モデル経験もある女子バドミントン大堀彩、ファッションの本場パリでの五輪で目指す笑顔と涙 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

【パリ五輪への道は巡り合わせ】

粘り強く続けてきたことがパリ五輪への道を切り拓いた粘り強く続けてきたことがパリ五輪への道を切り拓いたこの記事に関連する写真を見る

ーー東京五輪後の2022年には、世界ランキングが37位まで落ちる時期もありましたね。

「ナショナルB(代表)に落ちて、今思えばあそこが一番苦しかったですね。何をしてもうまくいかない時期で、試合でも『どうやって勝つんだっけ?』と勝つ感覚を忘れ、ランキングが下の相手にも負け始めていました」

ーーそこから徐々にランキングを上げ、本当にオリンピックを狙い始めたのは、昨年のアジア大会後から?

「本当にそうです。五輪選考レースは2023年5月にスタートしたけど、オリンピックに出られると思ってスタートしたわけではありません。実際、最初の3~4カ月は何も結果を残せていませんでした。

 でも9月のアジア大会で3位になって、世界ランキングも一気にパリ五輪出場圏内近くまで上がったので、『この調子とこの感覚をずっと保てれば、もしかしたら』という思いがちょっと生まれてきました。それからは、それまでよりも練習の質を上げることができました」

ーーアジア大会のグレードが、全英オープンなどと同じスーパー1000に上がり、獲得ポイントが増えたことも大きな要因でしたね。

「直前になって急に1000になったけど、やっぱりそれも運です。アジア大会も予定どおり2022年に開催されていたら(実際は1年延期)、私はメンバーにすら入れていませんでした。そう思うと本当にすべてが巡り合わせ、運命だなっていうふうに思います。

 自分でも予想外のことが五輪選考レース中には多くて、もうひとりの自分から自分自身を客観視したら、『本当に自分?』と思うようなことがアジア大会あたりから本当に多くなりました。試合をしていても、何か自分とは思えないくらい体が動くことが多かったです」

ーー今年4月のアジア選手権で東京五輪銀メダリストの戴資穎(タイ・ツーイン)選手(チャイニーズタイペイ)に勝った時は、今までにない喜び方をしていました。冷静でいなくてはと心に被っていた殻が、少しずつ剥がれてきたのかなとも感じました。

「やっぱり、1試合に対する意識や執念が変わったと思います。1試合の重さ、大切さを最近は本当に感じるので、勝ったらうれしいし、負けたらいつも以上に悔しさを感じます。その意味ではもう、本当にこの1年の成長だと思います。

 長い間、自分の殻を破れなくて閉じこもっていた。でも本当に予期せぬ場所だったアジア大会で想像もしてない結果が出てからは、ちょっとずつ殻を破ることができて自分でも予想外の結果になっていったという感じはあります」

ーーパリ五輪では自分をすべて出して、『自分はこんな人間だったんだ』と発見できるといいですね。思いきり喜んだり、思い切り泣いたり。

「五輪選考レース中も精神的には苦しかったので、ひとりで部屋にいる時に気づいたら涙が出ていたり、そういう日ばかりでした。ただ、どうしても人前では自分を強く、カッコよく見せたいので、涙を流すのはイヤなんです。うれしい時は笑うけど、どちらかといえばあんまり感情を出したくないのは少なからずあります」

ーーうれし涙ならいいのでは?

「それが一番カッコいいけど、優勝じゃないと......。今でも準決勝を勝っても心から喜べない部分があって、優勝してようやく素直に笑顔になれる感じです。やっぱり優勝のうれし涙はオリンピックなどの特別な場所でしか流せないでしょうね。

 でも、自分が納得できればうれしいし、本当にそこが1番のゴールで『納得がいけば結果は自然に』と思うので、自分自身を出しきる努力や準備をしていくべきだと思っています」

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