「SNSは親指一本で人を死に追いやる危険性も...」それでも 700万フォロワー「レミたん」はTikTokで人を幸せにしたい (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Nagatsuka Kazushi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【SNSは親指一本で人を幸せにできる。その考え方が広がってほしい】

――TikTokでのこだわりや戦略は?

土井 一番大事なのは、誰も傷つけないコンテンツを発信することです。これだけフォロワーが増えても、アンチはほとんどいないと思います。

 そして、世界中の人をひとりでも多く楽しませたいという思いです。非言語で動画を作っているのはそういう理由で、誰が見ても理解できる内容にしています。

 動画を撮る時も、中途半端なことはしたくないでので、やるんだったらとことん全力でふざけています。僕あまり羞恥心もないので。どこかに置き忘れてきちゃったんですかね(笑)。

――アンチの存在もそうですし、SNSには影の部分もあると思います。その点で何か思うことはありますか?

土井 もっとSNSや道徳の教育に、力を入れたほうがいいなと思います。アンチへの対策を考えるのも大事なことですが、アンチから攻撃されたあとの対策だけじゃなくて、それ以前にアンチがつかないような人間作りや動画作りなどの勉強をしておく必要があります。ユーチューバーなどは華々しいイメージもありますが、傷ついて辞めちゃう人も多いですから。

――そういったセンシティブな側面もありますが、それでもSNSには人々を幸せにするポテンシャルがあるという考えですか?

土井 ポテンシャルはあります。どっちに転ぶかっていうのは、結局使う人次第です。SNSは、親指一本で人を死に追いやる危険性もあります。それを裏返すと、親指一本で人を幸せにもできるツールです。そういう考え方の人が増えてほしいです。

――SNSのアイディアはどうやって考えているのですか?

土井 アイディアは日常のなかにあふれています。元々、カートゥーンの世界観に憧れがあって、『トムとジェリー』など、言葉がない状態でも楽しめる作品が好きだったんです。

 だから、普段からそういうマインドで生活しています。それと"物"の気持ちを考えるのも好きです。紙くずがデパートの隅に置いてあるゴミ箱の裏に入ってしまって、何年も捨てられずそこにいたとしたらどんな気持ちなんだろう? とか、そういうちょっとモノ悲しい"物"の気持ちを想像したり、表現したりするのも面白いです(笑)。

――SNSを含め、引退後のキャリアについては、どのように考えているのでしょう?

土井 ビジネスをやりたいですね。スポーツの分野に限らず、自分がやりたいと思ったことや、世の中の将来を見通して、こういうサービスがあったらいいのになって思ったことをやっていくつもりでいます。まさにいま少しずつ動き始めているところです。

 海外で生活していたので、日本のよいものを「これ、あの国にあったら絶対流行るのに」と感じていたり、逆もしかりで、「日本にない海外のサービスを日本に持ってきたら絶対需要があるのに」というものが実はたくさんあると思うんです。日本と世界の橋渡しになるようなサービスを提供できたらいいなと思っています。

 でもそれはゴールではなくて、将来的にもっとやりたいことがあります。TikTokってデジタル世界じゃないですか。ハンドボールの外にいる人たちに、僕はデジタル世界の中で知ってもらって、彼らとハンドボールをつなげることができました。デジタル世界だけじゃなくて現実世界でも同じことを起こしたいんです。会社のサービスやメディアを通じて、現実世界の人たちと交わる機会をどんどん作って、その人たちをハンドボールの世界に連れてこられたら素敵ですね。

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土井レミイ杏利(どい・れみい・あんり)
1989年9月28日生まれ。千葉県出身。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、小学3年生の時にハンドボールを始める。大学卒業後、ヒザのケガをきっかけに一度は競技を引退。語学留学のためフランスへ渡るが、留学先でヒザの痛みが消えていることに気づき、再びハンドボールの世界へ。2012 年、フランス1部リーグ『シャンベリ・サヴォワ・ハンドボール』のセカンドチームの練習に参加。その後、プロ契約を結び、2017年には日本人ハンドボール選手史上初のオールスター出場を果たす。2019年より日本ハンドボールリーグの『大崎電気OSAKI OSOL』に移籍し、2021年から『ジークスター東京』に所属。日本代表でも長年主力として活躍し、東京五輪ではキャプテンも務めた。2024年5月のプレーオフをもって現役を引退。
『TikTok』では700万人を超えるフォロワーを持ち、大人気TikTokクリエイターとしての顔も持ち合わせる。180cm・80kg

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