ハンドボール元日本代表・土井レミイ杏利が引退「僕をきっかけにハンドボールを始めた子どもたちに、僕と同じ思いはしてほしくない」
元ハンドボール日本代表・土井レミイ杏利インタビュー (前編)
日本ハンドボール界のトップ選手として活躍してきた土井レミイ杏利(前・ジークスター東京)が、5月に行なわれた日本ハンドボールリーグのプレーオフのセカンドステージ・トヨタ車体ブレイヴキング戦での敗退をもって、26年におよぶハンドボール生活から退いた。
学生時代のケガをきっかけに、父の母国であるフランスでも6年間プレーした経験を持つ。その間、人種の壁に悩み苦悩した日もあったが、日本代表でもキャプテンを務めるなど、常に日本ハンドボール界の中心であり続けた土井は、最後まで笑顔のままコートを去った。
そして、土井は700万フォロワーを抱える大人気TikTokクリエイター「レミたん」としての顔も持ち合わせている。
インタビュー前編では、現役生活のことやフランスでの苦い経験を基にした物事の考え方、そして同じように悩む人々へ土井が伝えたいことを聞いた。
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【過去に執着しない。だから自分の試合を振り返ったこともない】
――負ければそこで現役生活も終わりとなるプレーオフ。どのような気持ちでプレーをされていたのでしょうか。
土井 26年間のハンドボール生活の集大成を見せようと考えていました。正直、優勝して終わりたかったなっていう気持ちもありましたが、すべてを出しきることができたと思います。楽しかった時もあれば苦しかった時もあって、いろいろな思いがありますが、ハンドボールに対しては最後までまっすぐな気持ちで、最終戦も笛が鳴るまであきらめず戦い続けようと、その一心でした。
プレーオフ初戦、トヨタ紡織九州レッドトルネード佐賀戦でシュートに挑む土井この記事に関連する写真を見る
――長い競技生活でのハイライトは?
土井 すべての試合に100%で臨んできましたので、その都度思い出には残っているけれど、ひとつを選ぶことはできないんです。
―― 過去にはあまり執着されないタイプなのでしょうか。
土井 まったく執着しないです。自分の試合を振り返ることもしません(笑)。過去にとらわれるのが好きじゃないんです。もちろん目の前の試合には全力で臨んでいましたが、過去にばかりとらわれているとチャレンジ精神を忘れてしまって、どこか気持ちが緩んでしまう気がするんです。
ただ、自分のことは振り返らないんですけど、世界や日本の歴史を学ぶのはすごく好きなんです。
たとえば、宗教の興りにも興味があります。僕が暮らしていたフランスは他民族国家ということもあり、若い人たちでも宗教に対するイメージや歴史観を持っています。向こうで生活をしていた時にはいろいろな刺激がありました。日本ではそういった話をする機会が限られていると思うのですが、フランスにいると若い人の間でも議論が当たり前のように交わされるんです。そういう環境にいると、自分が住んでいる世界のことを何にも知らないんだと気づかされて、そこから歴史を学ぶようになって、それが楽しくなりました。
過去が見えると、未来がどうなるかっていうのも想像できるようになります。僕は10年、20年先のことを考えるようにしていて、そこから逆算すると、今自分が何をしたらいいかがわかってくるというか。だからこそ歴史を学ぶのって楽しいなと。
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