桃田賢斗が日本代表活動から引退 無敵の世界王者時代、悪夢の交通事故...激動の10年を経て最後の国際大会に挑む (3ページ目)

  • 平野貴也●取材・文 text by Hirano Takaya

【世界中が注目する存在、日本では民放が生中継】

 大きなタイトルを勝ち取っただけではない。2018年、19年は、2年続けて国際大会での勝率が90%を超えた。

 勝ち続ける桃田への関心は、高まり続けた。

 現世界ランク1位のビクター・アクセルセン(デンマーク)は、桃田と同じ1994年生まれ。ジュニア時代からのライバルだった。2016年のリオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得している。

 桃田が出場停止処分明けで、まだ国際大会のトップシーンに復帰していなかった2017年に世界選手権を優勝。今に至るナンバーワンへの歩みを進めていたが、桃田との対戦成績は、3勝14敗。2014年に1勝、21年以降に2勝をしただけだ。桃田は2015年から20年まで、ライバルを完封し続けるだけの実力を誇った。

2019年には世界選手権を連覇した桃田賢斗 photo by Getty Images2019年には世界選手権を連覇した桃田賢斗 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 桃田が2019年に連覇した世界選手権の開催地は、スイスのバーゼル。会場のザンクト・ヤコブ・アレーナでは、コートだけに照明が当たり、暗がりとなったスタンドに座った競技関係者やファンの会話のなかから「モモータ」の単語が聞こえてきた。桃田の試合が行なわれていない時間帯でも、彼らの関心の中心に桃田がいることが、よく伝わってきた。

 翌年に東京五輪を控えていた(20年上旬にコロナ禍が始まり、21年に延期)こともあり、五輪金メダルの筆頭候補として、日本でも期待が高まった。バドミントンに関心のない人たちも、期待の若手から、出場停止処分を受ける問題児となり、そこから世界王者へと駆け上がったストーリーに関心を寄せ、知名度はどんどん高まった。

 2019年世界選手権の決勝戦は、放映権を持っていたテレビ朝日系列で、急きょ生中継が行なわれた。午後9時からのプライムタイム。いつか、バドミントンが野球やサッカーのように、民放で生中継されてメジャー競技になってほしい――。そんなバドミントンファンが描いていた夢を、桃田は現実にかなえていく特別な存在となった。

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