早田ひなと張本智和が中国トップ3に勝つには...水谷隼が分析するポイントは「サービスと戦術」 (3ページ目)
――早田選手は準々決勝であれだけの試合をして、準決勝でもう一度集中を高めるのは難しい部分もあったでしょうか。
水谷 もちろん、それはあったと思います。王芸迪選手との試合は、すべてのゲームがデュースになって自分のすべてを出し尽くした試合だったと思うので。しかも中国は、相手を研究し尽くしてきますからね。
例えば、孫穎莎選手は第1ゲームの1本目、早田選手のバック前にサービスを出してきました。それって、王芸迪選手が早田選手との最終ゲームの後半に出してけっこう効いていたサービスだったんです。中盤ぐらいでサービスが全然効かなくなった王芸迪選手は、早田選手のバック前にサービスを集めた。それで早田選手はレシーブにちょっと困っていたので、孫穎莎選手はたぶんそれを見て1本目からバック前にサービスを出してきたんだと思うんです。
案の定、早田選手はいいレシーブができなかった。そういうふうに中国はすごく研究してくるし、強い選手は見つけた戦略をすぐ実践で使えるんです。
【張本智和の「未熟な部分」】
―― 一方で男子の張本智和選手は、シングルス準々決勝で世界ランキング5位(当時/現7位)の梁靖崑選手(中国/リャン・ジンクン)にゲームカウント2-4で敗れてベスト8でした。彼の戦いぶりはいかがでしたか?
水谷 第1ゲームの1本目で、張本選手がいきなりロングサービスを出す奇襲攻撃にはすごくびっくりしました。たぶん、今までの試合では一度も見せたことがない、思いきった戦術でしたね。そこに彼の成長を感じて、新しい張本選手が見られた。ただ、その1ゲーム目を相手に取られてしまったのがちょっと痛かったです。
――張本選手本人もそう言っていました。ちなみに、あのロングサービスはコートに立った瞬間、「出そう」と閃いたそうです。
水谷 第2ゲーム以降はフォア前にもサービスを出したんですけど、それも効きましたね。それは、第1ゲームでバックロングサービスをいっぱい出していたから。あれはすごくいい戦術転換でした。ただ、今までの試合もそうなんですけど、張本選手は「サービスが効かなくなってから戦術を変える」パターンが多い。もっといろんなサービスを混ぜていけばいいのに、と思うんです。最初は効いていても、相手がだんだん慣れてくると自分のやることがなくなっちゃうんですよね。
――選手としては、効いているうちは同じサービスでいきたいという気持ちがあるのでしょうか。
水谷 いや、そこは張本選手の未熟な部分だと思います。梁靖崑選手は序盤からいろんなことをしてきて、例えば大事なポイントで張本選手のフォア側にチキータをしたこともあった。それまでずっと、バッグ側にチキータしていたのに。「強い選手って、やはり勝負どころで思い切って変えるんだな」と思いました。サービスも最後、点が欲しいところで一番効くサービスを出したり。それに対して張本選手は、まだちょっと思いきれませんよね。
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