早田ひなと張本智和が中国トップ3に勝つには...水谷隼が分析するポイントは「サービスと戦術」 (4ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by 長田洋平/アフロスポーツ

――ゲームカウント2オールで迎えた第5ゲーム。9対8でリードしたところでチャンスボールを痛恨のミスという場面もありましたね。

水谷 完全に相手の流れになってしまった1本でしたね。練習や普通の試合だったら95パーセント以上入るボールなんですよ。入れば、ほぼ間違いなく得点になったでしょうし。でも、残り5パーセントのほうが出てオーバーしてしまった。本人もそれはすごく悔しいだろうし、ずっと忘れられないと思います。

――張本選手も「ずっと頭に残るだろう」と言っていました。

水谷 長く卓球をやっていれば、いっぱいあるんですよ。「あの時の1本、何でミスったんだろう?」っていう場面が。僕も、2012年(平成23年度)全日本選手権の決勝で吉村真晴選手に負けた時、「なんでああしたんだろう?」と今でも思うし、当時に戻って、自分に「なんで?」と言いたいくらいです。

 張本選手にも"一生忘れられない傷"みたいなものが残ったと思うんですけど、大きな傷が残れば残るほど練習中にそれが疼くし、試合で同じようなボールがきた時に「今度は絶対ミスしない」と思える。だから僕は、あえて今回のミスを忘れないように、張本選手をたくさんイジってあげようと思います(笑)。

(中編:男子卓球界の現状と、張本智和に次ぐ選手が世界で勝つために必要なこと 日本の指導者育成の課題も>>)

【プロフィール】

水谷隼(みずたに・じゅん)

1989年6月9日生まれ、静岡県出身。両親の影響で5歳から卓球を始め、中学2年からドイツ・ブンデスリーガに卓球留学。2007年に全日本選手権シングルスで優勝し、2019年には10回目の優勝を果たす。オリンピックには、2008年の北京五輪から4大会連続で出場。2016年リオ五輪ではシングルスで日本人初のメダル(銅メダル)を獲得。2021年東京五輪では混合ダブルスで金メダル、男子団体で銅メダルを獲得した。2022年2月に引退セレモニーが行われ、現役生活を終えたあとは解説者やタレントなど、幅広く活躍している。
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