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日本卓球女子の「陰」の存在だった長﨑美柚が飛躍。伊藤美誠ら黄金世代に食い込んでパリ五輪出場を目指す (2ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by 新華社/アフロ

【世界選手権代表の座を掴み「自分もやればできる」】

 その長﨑が少しずつ変わり始めている。最初のきっかけは、世界選手権成都大会出場の切符を手にした2022年3月のLION CUP TOP32。パリ五輪代表選考会の第1回として開かれ、長﨑は準優勝だった。

 その大会の準々決勝で伊藤を下した長﨑は、決勝で早田と激突。3ゲームを先取して大量リードを奪いながら、戦術の引き出しが多い早田に追い上げられ、フルゲームで逆転負けを喫した。

 世界ランキング6位(現在5位)の早田が、当時65位(現在39位)だった長﨑に底力の違いを見せつけた結果だった。だが、以前は勝負所で攻めきれない、あと1本が取れない詰めの甘さがウィークポイントだった長﨑も、見違えるようにアグレッシブなプレーを見せた。

 特にロングサーブからの3球目攻撃は見事で、大きな得点源となった。

 前年の2021年は、トップクラスの仲間入りを果たす成長段階であらゆることを難しく考えすぎてしまい、「自分本来の卓球を忘れることもあった」と言うが、久々に納得のいく試合内容で世界選手権出場を決めたことに「自分もやればできるという自信につながった。もっとできるっていうことを証明できた」と、長﨑は大粒の嬉し涙をこぼした。
 
 世界選手権本番ではフォアハンドドライブの強化が実を結んだ。

 身長165cmの恵まれた体格から繰り出すフォアハンドのパワードライブはもともと彼女の大きな武器だが、以前ならバックハンドで返球していたミドルのボールもフォアに回り込んで、得意のパワードライブで得点を奪っていた。

 ツッツキ(下回転をかけて返球されたボール)に対しても攻撃していけるよう、対下回転のドライブも練習。この技術を修得したことで「連続攻撃ができるようになった」と長﨑は言う。

 また、強い左手首を生かした威力のあるチキータ(打球に強い横回転をかけたバックハンド)も健在で、自信を持って攻めていけるウイニングボールとなった。

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