ハンドボール日本代表・土井レミイ杏利が人種差別を経験して気づいたこと (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by AFLO SPORT

 それは、たとえばサッカーの試合で見られる、サポーターが相手選手に対して侮辱的な言葉を投げつけるようなものではなかった。土井は相手サポーターからではなく、チームメイトから差別を受けたのだった。

「毎日、僕の名前じゃなく、侮辱的なあだ名で呼ばれていました。なんでそんな呼ばれ方をされないといけないのか......さっぱりわからなかったですし、すごいストレスでした」

 フランスは多民族国家で、異なる人種への理解がありそうに見えるが、時としてブラックジョークが度を越し、人をバカにして笑いをとり、差別的な発言へとなっていく。

「フランスは、上下関係はないですが納得いかない時は、はっきりとモノを言う文化なんです。だから、最初に『くそっ』って言われた時、『なに言ってんだ!』と強気に出ればよかったんですけど、それができなかった。何を言われても笑っていたら、『コイツはそういうヤツだ』ってどんどんバカにされて......」

 周囲の人に相談すると励ましてくれたが、彼らの言葉は土井の胸に刺さらなかった。自分を助けてくれる人などいない......そんな孤独感に苛まれていった。

「自分はひとり。そうした孤独感も人種差別の言葉同様にキツかった。いじめを受けて苦しみ、孤独を感じている人の苦しみを実感しました」

 だが土井は自閉せず、何が原因だったのかを考えた。「ノー」と言えない自分にも原因はあったが、チームメイトとコミュニケーションがとれず、人間関係を構築できなかったことも大きかった。何も言えず、言わないことでバカにされ、コートではフリーでもパスが回ってこなかった。結局は、人間関係の悪さがコート上でも出てしまい。それが差別発言に拍車をかけた。

「どうしたらいいのかって考えた時、シーズンオフにメンタルを入れ替えようと思ったんです。毎日イメトレをして、何があっても楽しんでプレーする。そうした自分に変わることができれば、みんなの見方も変わるはずだと。それからは明るく接して、それまでは言われっぱなしでしたが、冗談っぽく言い返したり......」

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