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レブロン、八村塁らとレイカーズで活躍する姿にダラスのファンは......ルカ・ドンチッチを放出したマブスの今とこれから (3ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【マブス側の事情を理解するとすれば......】

移籍直後のケガから3月末に復帰したデービス photo by Getty Images移籍直後のケガから3月末に復帰したデービス photo by Getty Images もっとも、すべての事情(と思われる事案)を考慮したうえで、それでも"マブスが正しかった"と示される流れも、ないわけではない。ゴール周辺で力を発揮するデービスの加入により、マブスはディフェンス面で大きくグレードアップしたのは事実。そんな事情を考慮し、ジェイソン・キッドHCはこう述べている。

「チームのビジョンとニコがやりたいことを私は支持しているし、私たちが獲得した選手たちが優勝を助けてくれると信じている。優勝するには、ディフェンスが必要だ。ADは(デレク)ライブリー、(ダニエル)ギャフォード、PJ(ワシントン)とフィットする。今が勝利のチャンスなんだ」

 すぐにでも勝ちにいきたいチーム事情を考えれば、トレード直後にデービス、またベテランのスターガード、カイリー・アービング(左膝のアキレス腱断裂)がバタバタと倒れ、アービングに至っては今季終了となったのは不運としか言いようがなかった。マブスはまだプレーオフ進出のチャンスは残してはいるものの、今季中の優勝争いはもはや現実的ではない。

 とはいえ、アービング、クレイ・トンプソン、ワシントン、ギャフォード(or ライブリー)、デービスで構成されるスタメン5人は確かに強力に思えた。ギャフォード、ライブリーといったセンターたちがいれば、デービス自身が希望するパワーフォワード(PF)でプレーさせることも可能となる。主力が健康を保ちさえすれば、マブスは相手に脅威を感じさせるチームになるのだろう。

 ただし、突っ込みどころとしては、現主力メンバーの "賞味期限"が限られていること。冷静なホリンジャー記者は自身のコラム内でその点を指摘していた。

「ハリソンGMが就任して以来、マブスは多くの賢明な動きを見せ、昨春のNBAファイナル進出に至った。 しかし、このトレードが大惨事になる可能性は非常に高いように思える。マブスは高齢化が進み、現在のロースターが底をつく可能性が高い2027〜2030年の間には自前のドラフト1巡目指名権を持ってすらいない(*今トレードでレイカーズから2029年の1巡指名権を得たが、上位指名権の期待は薄いという前提の意味)

 もともと耐久力には疑問が呈されるアービングは33歳、デービスは32歳。アービングとデービスのコンビが熾烈なウェスタン・カンファレンスの上位を脅かす現実的な寿命はどれくらいなのか、疑問に思わざるを得ない」

 実際にアービング、デービス、トンプソン(35歳)の年齢を考えれば、マブスは向こう1、2シーズンが勝負か。特にデービスがまだ全盛期に近い力を残し、アービングもシーズン中に故障から復帰する来季は、重要な年になってくるだろう。

 マブスが今後数年のうちにドンチッチとレイカーズの上をいく成績を残し、チーム史上2度目の優勝までたどり着くようなことがあれば、"不人気トレード"はそこで晴れて正当化される。その時に、ハリソンGMのビジョンは再評価されるはず、だが......。逆に言えば、そのケースくらいしか現在の評価が逆転するシナリオが見えてこない現実が、今回のトレードがダラスで圧倒的に不支持だった理由ではある。

 ただ、それでもまだ可能性は残されている限り、繰り返しになるが、リーグ全体を震撼させたトレードの真の"審判"を現時点で下すべきではない。ただ、このトレードの話題は今季だけにとどまらず、今後何年にもわたって燻り続けることだけは間違いないだろう。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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