レブロン、八村塁らとレイカーズで活躍する姿にダラスのファンは......ルカ・ドンチッチを放出したマブスの今とこれから (2ページ目)
【"あり得ない"トレードはマブスの未来に悪夢をもたらすのか?】
レイカーズで本来の力を発揮し始めているドンチッチ photo by Getty Images「何かの間違いではないのか?」。2025年2月1日、アメリカ東部時間で深夜0時15分頃、NBAの歴史において永遠に語り継がれるであろうトレードの第一報を聞いた際、多くのバスケットボールファンはそう思ったのではないだろうか。
この日、レイカーズ、マブス、ユタ・ジャズの3チームによる6選手、3つのドラフト指名権が絡んだブロックバスタートレードでドンチッチはレイカーズ、パリ五輪アメリカ代表の金メダルメンバーでもあるデービスはマブスに移籍。若干25歳のドンチッチはすでにオールスターに5度、オールNBAファーストチームに5度も選出され、さらに昨季は平均33.9得点と得点王に輝いたほか、9.2リバウンド、9.8アシストの大活躍でチームを7年ぶりのファイナル進出を果たしたばかり。しかも、すでに伝えられているように、本人への通達なしに実行されたという。それゆえ、トレード放出のインパクトは余計に大きかった。
「"一世代にひとり"と評価されるレベルのスーパースターがトレードに含まれることは通常、ありえない。FA移籍するとしても、一度の契約延長を終えたあとのこと。もしもトレードがあるとすれば、獲得するチームはすべてを差し出さなければならない」
メンフィス・グリズリーズの元エグゼクティブであり、現在は『The Athletic(ジ・アスレティック)』のシニアライターとして健筆を振るうジョン・ホリンジャー氏のそんな言葉は、今回の移籍劇が"ありえないもの"だったことを指し示す。
マブスがトレードを断行した真の理由は依然として謎に包まれているが、チームに近い関係者の話を聞く限り、端的に言えば、「ドンチッチの心身のコンディショニングに不安を抱いたチーム上層部がスーパーマックス契約授与を敬遠し、デービスを獲得して向こう数年に優勝が狙えるチームに移行した」ということなのだろう。
ドンチッチが今シーズンをマブスで終えていれば、今夏にはマブスと5年3億4500万ドル(約517億5000万円)というスーパーマックス契約での延長が可能だった(移籍したレイカーズと再契約する場合は、5年2億2900万ドル=約343億5000円が最高)。年俸にして7000万ドル(約105億円)近い額での長期契約はチームにとっても大変なコミットメントである。20代半ばにして体重超過になりがちで、今季は故障により合計30試合を欠場してきた選手にそこまで払いたくないというオトナの事情も理解できなくはない。
ただ、コートに立った際のドンチッチはまぎれもなくリーグで5本の指に入る選手である。計り知れない才能を持った25歳が多少羽目を外す時期があったとしても、いずれ成熟し、長く充実したキャリアを築くことは、それほど想像するのに難しいことではない。
何よりも大事なことは、スロベニア出身の"ファンタジスタ"は人気も抜群だった。プロスポーツは選手の魅力でファンに夢を売るエンターテインメント・ビジネスである。いかに上層部にとって厄介な存在になりつつあったとはいえ、昨季優勝の一歩手前までいったチームのNo.1スターを自ら放り出せば、反発が出るのは当然のこと。案の定、ファンは激怒し、トレードの引き金を引いたとされるマブスのニコ・ハリソンGMは現時点でダラスの"Public Enemy(公共の敵) No.1"となっている。
特にトレードの見返りとして未来のドラフト1巡目指名権(2029年)をひとつしか得なかったこと、トレード期限後のレイカーズがドンチッチを軸に好調な戦いを継続していることもマブスファンの怒りに拍車をかけた。
このままいけば、この放出劇は、ダラスでは「史上最悪のトレード」と記憶されていく可能性が十分ある。
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