EASL取材メディアから注目されるBリーグ発展と河村勇輝の存在「ハートの大切さを教えてくれた」
Bリーグ勢が連覇達成。改めて存在感を示した ©EASLこの記事に関連する写真を見る
EASLの現場から見たBリーグの現在地 後編
【EASLの意義】
3月7日から9日にかけて、マカオで開催された「東アジアスーパーリーグ(EASL)・ファイナル4」で、Bリーグ代表の広島ドラゴンフライズが優勝し、昨年度の千葉ジェッツに続いて日本勢が連覇を達成した。この勝利に各国のメディアは高い関心を寄せている。
EASL決勝戦後の会見では、フィリピン出身のカーロ・サカモス記者が広島の朝山正悟ヘッドコーチに「(フィリピン・)PBAのチームはあなたたちからどのようなことを学べるでしょうか」という質問をした。これに対して朝山氏はPBAの状況に詳しくないと前置きをしつつ、「スタッフの体制やトレーニングの施設など環境面も含めて、日本のレベルが少しずつ上ってきたというのが大きな要因ではないか」と答えた。
昨年と今年のファイナル4では、いずれもバスケットボールの盛んなフィリピン勢は出場を果たせていない。PBAでは外国籍選手が1名しか認められていないことが、2名のプレーが許されるEASLで苦戦している要因のひとつとなっているであろうことは想像に難くない。
フィリピンのサイト「SPIN.ph」などで執筆をしているサカモス氏には、なぜ会見で朝山HCにそのような質問をしたのかを聞くと「フィリピンのチームがEASLでもレベルアップをしてほしいし、それはPBAにおいても同様だから」と話した。
Bリーグには2人までがコートに立つことができる外国籍枠とは別にもう1人、「アジア枠」の選手がプレーできる制度があり、現在、多くのフィリピン出身選手が日本のチームに所属している。そのためBリーグの認知度は同国で高く、「若い選手もPBAよりもBリーグでプレーすることを望むケースが増えている」とサカモス氏はいう。
「Bリーグはとても競争力の高いリーグです。外国出身の選手が2人から3人コートに立つことができているのは、PBAが学ぶことができる点です」
広島がニュータイペイキングスを破った準決勝後の会見では、台湾の記者から朝山HCにこのような質問が投げかけられた。
「アシスタントコーチなどがパソコンを使って試合中に分析をしていたと思いますが、そうしたことはBリーグでは主流で、こちらのほうが早く分析ができるのでしょうか」
Bリーグでは多くのチームがパソコン等を駆使して映像分析を行なっているが、これにはテレビの中継フィードを分配してもらうインフラがなければ成り立たない。上記の台湾の記者がこのような質問をしたのは、台湾のリーグではまだこのような慣習がないと推察できる。いずれにしても、他国リーグでの取り組みを学び、それを競技面、ビジネス面での発展につなげる機会をもたらしているとすれば、EASLの意義は大きいといえる。
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著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。