河村勇輝の挑戦は「3年計画」 日本人史上4人目のNBAプレーヤー誕生の背景とこれからの歩み (3ページ目)
【ハッスルで求められる役割】
一方で、ハッスルにおいて河村は大きな役割を担うことになりそうだ。
グリズリーズのテイラー・ジェンキンスHCは、河村が常にチームの勝利のために戦う姿勢を高く評価しており、「ハッスルでもそういったチームのカルチャーを作り出してほしい」と、期待している。
GリーグはNBAに上がりたい選手たちが自分のアピールのためのプレーに走るというイメージがあるかもしれない。そういう傾向があるのは確かだが、最近では攻守でNBAチームと同じシステムを用い、NBA本契約の若手選手やツーウェイ契約選手たちが、必要なときにNBAに上がってすぐに対応できるように準備する場という意味合いが強くなってきている。そんななかで、グリズリーズのトレーニングキャンプでオフェンスのシステムを学び、常に勝利第一の姿勢を見せてきた河村がポイントガードとしてチームを率いることは、河村自身だけでなく、他の選手にとってもプラスになる。
特に、今シーズンのグリズリーズは、速いペースでパスとオフボールでの動きを生かした新しいオフェンスを導入している。その新オフェンスの飲み込みが早いことも、河村がグリズリーズのコーチ陣から評価されているポイントだ。ともするとグダグダになりがちなGリーグのなかにおいて、河村がポイントガードとして牽引することで、グリズリーズでやっているシステムになるべく近いオフェンスをハッスルでもやれるのではないかと期待されている。
そういった状況を考えると、ハッスルでの河村はチームの中心選手のひとりとして、重要な役割、多くの出場時間を与えられることは間違いない。そのチャンスを生かして、さらなるステップアップをするシーズンを送ることができるか。期待して見守りたい。
著者プロフィール
宮地陽子 (みやじ・ようこ)
スポーツライター。東京都出身。アメリカを拠点にNBA取材歴30年余。アメリカで活動する日本人選手やバスケットボール国際大会も取材。著書に『The Man〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)、2023年1月発売の共著に『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』(集英社)。
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